公務員の副業が解禁!公務員でもできる副業、できない副業を解説します!
平成30年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、民間企業で副業が推奨されるようになってきました。「だったら公務員も副業しても良いの?」と疑問に思った方も多いはず。
公務員が副業禁止なのは有名な話ですが、時流に合わせて、公務員も副業が認められるケースが増えています。しかしルールを知らないと大変なことに!
この記事では、公務員でもできる副業、できない副業を詳しく解説します。副業をしたいけれど、バレるのが怖いと迷っている公務員の方は参考にしてください。
公務員の副業はいつ解禁?禁止理由とルールについて解説
公務員の副業が解禁されたといっても、基本的には禁止されています。安全に副業をするためには、公務員の副業に関する法律を知っておきましょう。
公務員の副業に関する注意点を次の5つにまとめました。
- 公務員が副業を禁止される理由とは
- 公務員の副業・兼業について定めた法律3つ
- 営利目的の副業を禁止する「副業禁止の三原則」
- 公務員の副業は申請と許可があればできる
- 副業を解禁した自治体の例
具体的に見ていきましょう。
公務員が副業を禁止される理由とは
公務員は基本的に禁止が禁止です。バレなければいいといったレベルではなく、国家公務員法で禁止されており、かなり強い縛りといえます。
その大きな理由は、公務員は国民のために働くべき存在であり、公平性や中立性を保つ必要があるためです。
公務員の副業・兼業について定めた法律3つ
安全に副業に取り組むためには、副業・兼業について定めた法律を知りましょう。公務員の副業を規定しているのは、国家公務員法 第103条・第104条と地方公務員法第38条です。
国家公務員法では次のように記載されています。
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
国家公務員法第103条「私企業からの隔離」
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行なうにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
国家公務員法第104条「他の事業又は事務の関与制限」
103条では「役員兼業」と「自営兼業」の2種類を制限しており、違反したと認められたら刑事罰が科されることもあります。また営利企業の取締役や監査役・理事などになることは、名義のみでも兼業に該当し、報酬の有無に関係なく禁止されています。
対象 | 制限される兼業の例 | |
国公法第103条 | 営利企業の役員兼業・自営兼業 | 株式会社の取締役・監査役・不動産賃貸・太陽光電機の販売・農業 |
国公法第104条 | 役員報酬を得て、営利企業の役員等以外の兼業 | 第103条で制限される兼業以外の、あらゆる有報酬兼業(大学講師など) |
自営兼業は原則として禁止されていますが、不動産賃貸や太陽光電機の販売など、承認を得たら副業としてOKな場合もあります。
営利目的の副業を禁止する「副業禁止の三原則」
公務員は営利目的の副業を基本的に禁止されています。その根拠となるのが以下の3つの法律です。
職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
国家公務員法第99条「信用失墜行為の禁止」
職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
国家公務員法第100条「秘密を守る義務」
職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない
国家公務員法第101条「職務に専念する義務」
以上の法律に違反するような副業を行なうと、義務違反として懲戒処分を受けます。懲戒処分とは罪の重さに応じて、免職・停職・減給・戒告があります。戒告は注意のみですが、停職と減給は収入ダウン。免職となってしまえば職を失うという深刻な状況に陥るので注意しましょう。
「公務員における副業・兼業の現状と課題」という報告書のなかで懲戒処分の例が掲載されているので、一部ご紹介します。
母親の介護を訪問介護員の立場で行い報酬を得る | 懲戒免職 |
副業の許可を得ずに都内に借りたマンションで民泊を営業する | 減給6ヶ月 |
実体のないダミー会社を設立し、マンション賃貸業で年間2,500万円の収入を得る | 減給3ヶ月 |
勤務時間中に副業の原稿執筆を行なう | 減給1ヶ月 |
「これくらいはいいかな」といった甘い認識でいると、処分の対象となってしまうので十分注意しましょう。
公務員の副業はすでに解禁されていた!必要なのは申請と許可
公務員の副業に関する規定は厳しく、ほぼ無理じゃないの?と感じたかもしれません。実は、副業に関するガイドラインが整備され、公務員でも副業が徐々に解禁されつつあります。
公務員の副業は許可制が採用されており。任命権者(地方公務員を採用・解雇する権利を持つ者)に「兼業許可申請書」を提出し、許可が下りれば副業は可能です。
総務省がまとめた「営利企業への従事などに関わる任命責任などに関する調査結果」によると、平成30年の実績では41,669名の地方公務員が副業の許可を得ています。
許可が必要な兼業(副業)は、「定期的または継続的に従事」して、その対価として報酬を得ているものが対象です。(1回限りの講演で得た報酬などは、兼業(副業)にあたらない。)
内閣官房内閣人事局がまとめた「国家公務員の兼業について」では、職務専念義務を確保するために次のような条件を設定しています。
- 勤務時間が本業と重複しないこと
- 本業に影響がないこと
- 週8時間以下・1ヶ月30時間以下・平日(勤務日)3時間以下であること
公務員の副業解禁の流れと解禁した自治体の例
公務員の副業をめぐる最近の動向としては、民間企業の副業解禁の流れに合わせて柔軟に対応するケースが増えてきました。どのような事例があるのか、総務省の「地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について」より、具体例を見てみましょう。
自治体名 | 事例 | 活動頻度 | 報酬 |
山形県新庄市 | 商店街活性化支援 | 年50回 | 3万円/月 |
佐賀県佐賀市 | 障がい者支援 | 2~3日/週 | 2万円/月 |
岐阜県山県市 | 児童養護施設の訪問 | 1~2回/月 | 1万円/日 |
非公表 | 無料学習塾講師 | 3回/月 | 6,000円/日 |
「地域に飛び出す公務員」を応援する「首長連合」が発表した「望ましい「公務員の複業」ガイドライン」では、副業の5つの条件を挙げています。
- 時間外の活動であること
- 活動目的が非営利であること
- 報酬の金額や性質が適当であること
- 雇用関係がないこと
- 公務員としての中立公正、品位を保持していること
公共性が高く地域社会のコーティーネーターとしての活動であれば、許可が下りる可能性は高いようです。ほかにも地域のクラブチームのコーチ・手話通訳・古民家活用事業・産後ケアなどの事例があります。
これってOK?公務員ができる副業・できない副業29選
法律を確認したうえで、公務員ができる副業とできない副業を整理してみましょう。
次の4つのカテゴリーに分けて解説します。
- 公務員が許可なくできる副業10選
- 許可される可能性が高い副業4選
- 職場の判断で許可されるかもしれない副業6選
- 許可される可能性がほぼない副業9選
順に見ていきましょう。
公務員が許可なくできる副業10選
公務員の副業は許可制ですが、許可がなくてもできる副業を10つご紹介します。
仕事の種類 | 条件 |
---|---|
講演・講師 | 単発 |
執筆活動 | 単発 |
小規模農業 | 自家消費がおもな目的 |
家業の手伝い | 単発 |
不動産賃貸 | 一定規模以下独立家屋5棟以下 アパート10室以下土地10件以下 駐車台数10代以下 賃貸料収入が年額500万円以内 |
太陽光電機の販売 | 発電設備の出力が10キロワット以下 |
株・FX・仮想通貨 | 投資であって副業ではない 年間所得が20万円以上であれば確定申告の必要 |
フリマアプリでの不用品販売 | 自宅の不用品を売るのであれば可 |
アンケートモニター | 節約が目的なら可 |
治験 | 本業に支障がないこと |
不動産賃貸業と太陽光発電の販売は、細かく規定があります。その範囲内であれば申請は必要ありません。
また、副業は「定期的または継続的に従事」していることが条件なので、単発の講演や講師、執筆業は条件に該当しません。
許可される可能性が高い副業4選
次に人事院規則に記されている特別な副業を4つ紹介します。
これらの副業は、承認基準が定められており、申請が通れば副業として認められています。
仕事の種類 | 条件 |
---|---|
社会貢献活動 | 地域クラブチームのコーチ障がい者支援など公益性の高いもの 自治体によっては推奨されている |
不動産賃貸 | 一定の規模以上の場合申請が必要 独立家屋5棟以上 アパート10室以上土地10件以上 駐車台数10代以上 賃貸料収入が年額500万円以上 |
太陽光電気の販売 | 発電設備の出力が10キロワット以上 |
農業 | 脳号・牧畜・酪農・果樹栽培・養鶏など大規模に経営し、営利を目的としていると判断される場合 |
不動産賃貸業は、賃貸収入年額500万円が申請が必要なラインです。将来1年間に見込まれる収入を基準としており、経費控除前の金額が対象となっています。兄弟と共同経営の場合でも、合算の賃料が500万円以上であれば申請する必要があります。
また民泊目的の不動産は、不動産賃貸ではなく旅館業と判断され許可対象外です。不動産管理方法は、管理会社に委託するよう人事院規則に定められているので注意しましょう。
参照:人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
職場の判断で許可されるかもしれない副業6選
公務員の副業は許可制ですから、任命者の判断にゆだねられています。法令や事例から見ると、一見対象外と思える副業も、場合によっては認められる事例もあります。
仕事の種類 | 条件 |
---|---|
講演・講師 | 知識や研究成果を地域貢献のためにならOK 公共性が高い内容 本省課長補佐級以上の職員は単発でも報酬5,000円以上は贈与等報告書を提出 |
執筆活動 (出版・連載) | 文化活動が目的営利目的ではない 本業(公務)とは関係ないジャンル |
音楽活動 (チケット販売) | 文化活動が目的 営利目的ではない |
同人活動 | 文化活動が目的 自費出版など |
イラストレーター | 文化活動が目的 |
家業継承 | 不動産賃貸業や農業 本人が役員になるのは不可 |
SNSで発信することで話題になり、出版の声がかかるケースも増えてきました。例えば、都立高校教員の男性は、趣味で描いた子育て漫画をTwitterで発表していたところ、出版社から単行本化のオファーがありました。教育委員会に兼業申請を提出しましたが却下されてしまいます。
その後、男性は不服として、訴訟に持ち込みました。訴訟の結果は出ていませんが、男性は継続して書籍化や講演活動などを行っているようです。(参照:朝日デジタル|育児漫画の出版ダメ 高校教師、兼業不許可巡り都を提訴)
兼業(副業)の許可を得るためには次の条件をクリアする必要があります。
- 1日3時間・週8時間または月30時間を超えない
- 本業と兼業先に利害関係がない
- 本業に影響がない
- 経営上の責任者ではない
- 社会通念上常識的な報酬額である
- 公務員の信頼を傷つけない
許可される可能性がほぼない副業9選
公務員の副業は営利目的の事業はNGです。その観点からいえば、次の9つの副業は許可の可能性はほぼないといえます。
- ブログアフィリエイト
- YouTube
- 転売・せどり
- プログラミング
- ハンドメイド
- データ入力
- アルバイト
- クラウドソーシング
- ネットワークビジネス
上記以外の副業でも、営利目的のものは許可される可能性はほとんどないでしょう。匿名で行っていたケースでも、バレると懲戒処分の対象となります。
例えば、消防士がYouTubeでゲーム実況により収入を得たケースでは、1ヶ月の減給処分となっています。動画に本人は映っていなかったにもかかわらず、声の特徴でバレてしまったようです。
参照:読売新聞|消防士ユーチューバー、ゲーム実況で収入115万円…副業禁止で懲戒「認識甘かった」
公務員の副業に関するよくある質問
公務員の副業に関して、よくある質問をまとめました。
Q.家族名義なら会社経営はできる?
Q.公務員の副業が解禁されるようになったのはなぜ?
Q.禁止されている副業や兼業を公務員が行った場合の罰則は?
順に見ていきましょう。
Q.家族名義なら会社経営はできる?
国家公務員法第103条では、株式会社の取締役や監査役など会社役員や自営業兼業が禁止されています。無報酬であっても禁止されているので、自身が会社経営に携わるのはNGです。
家族名義であれば、本人にとっては副業にあたらないので大丈夫といえます。ただし注意点もあります。国家公務員人事院規則14‐8では、次のように但し書きが記載されています。
名義が他人であつても本人が営利企業を営むものと客観的に判断される場合もこれに該当する。
国家公務員人事院規則14‐8
つまり家族名義でも経営の主体が公務員本人とわかってしまうとNGなので注意しましょう。
Q.公務員の副業が解禁されるようになったのはなぜ?
民間企業で副業が解禁されるようになり、日本政府も「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を設定し、副業を後押しする流れが生まれています。それにともない公務員に対しても副業を一定の範囲で認める動きが出ているようです。
総務省が副業に関する調査に関して、各都道府県の人事委員会にあてた通知の冒頭には次のように記載されています。
近年、多様で柔軟な働き方への需要の高まりや人口減少にともなう人材の希少化などを背景として、民間労働政策において兼業や副業が促進されており、地方公務員も地域社会のコーディネーター等として、公務以外でも活躍することが期待されるようになっています。
地域貢献色が強い副業であれば、推奨される傾向です。
Q.禁止されている副業や兼業を公務員が行った場合の罰則は?
副業に関する罰則については、人事院の「義務違反防止ハンドブック」を参考にしましょう。法令ごとに、どこまでが違反でどこまでが違反でないかが具体例で理解できます。
違反した場合は、次のような懲戒処分の対象となります。
- 免職
- 停職
- 減給
- 戒告
処分を決めるのは任命権者です。国家公務員の場合は各省大臣、地方公務員の場合は県知事や市長など。処分の基準も一覧になっています。副業に関係しそうな事由は、おもに「(10)兼業の承認などを得る手続きのけ怠」の項目です。相当する処分は減給と戒告となっています。
公務員の副業は許可制!ルールー守って副業しよう
公務員の副業には厳しい規定がありますが、地域や公共に貢献するような副業であれば、むしろ推奨する自治体も増えてきました。
ただし公務員の副業は許可制のため、始める場合は必ず申請をしましょう。違反すれば懲戒処分の対象になります。この記事を参考に、ルールを確認したうえで安全に副業に取り組みましょう。
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