衛生管理者の仕事は、労働安全衛生法で「衛生に係る技術的事項の管理」と定められています。
具体的には健康診断や衛生教育、職場環境の管理といった業務を担い、少なくとも毎週1回は作業場を巡視することが義務づけられています。
一方で年収については、公的統計に「衛生管理者」という職種区分がなく、平均年収として示せる公式データはありません。
この記事では、法令で定められた仕事内容と選任のルールを整理したうえで、当編集部が受験経験者146人に行った調査から「取得後に何が変わったか」を実測値で見ていきます。
編集部のアドバイス

「衛生管理者の平均年収は◯◯万円」という数字をよく見かけますが、出所が示されていないものがほとんどです。衛生管理者は多くの場合、総務・人事や製造現場の担当者が兼務する役割なので、年収はその人の職種と会社の規模で決まります。資格そのものの相場という考え方が当てはまりにくい資格です。
衛生管理者の仕事内容は労働安全衛生法で決まっている
衛生管理者は、事業者が選任して「第10条第1項各号の業務のうち衛生に係る技術的事項」を管理させる立場です(労働安全衛生法第12条)。
第10条第1項各号の業務は次のとおりです。
| 号 | 業務 |
|---|---|
| 一 | 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること |
| 二 | 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること |
| 三 | 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること |
| 四 | 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること |
| 五 | そのほか労働災害を防止するため必要な業務で厚生労働省令で定めるもの |
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このうち衛生に関わる部分が衛生管理者の担当範囲です。
週1回の職場巡視が義務づけられている
労働安全衛生規則第11条では、衛生管理者は少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備・作業方法・衛生状態に有害のおそれがあるときは直ちに必要な措置を講じなければならないと定められています。
事業者は衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならないとも規定されています。
つまり衛生管理者は「気づいたことを報告する係」ではなく、措置を講じる権限を持つ立場として位置づけられています。
実務では総務・人事の担当者が兼ねることが多い
法令上の職務は上記のとおりですが、実務では健康診断の手配、衛生委員会の運営、職場環境の点検といった業務が中心になります。
こうした業務は総務・人事部門が担当することが多く、衛生管理者は専任ではなく兼務で選任されているケースが一般的です。
斉藤さやか当編集部の調査でも、受験のきっかけの43.8%が「会社から選任・取得を求められた」でした。つまり多くの人にとって衛生管理者は「転職して就く職業」ではなく、いまの仕事に加わる役割です。この前提で考えると、年収の話も現実的に捉えられます。
衛生管理者を選任しなければならない事業場と人数

衛生管理者は、事業者に選任義務がある国家資格です。
| 事業場の規模(常時使用する労働者数) | 選任する衛生管理者の数 |
|---|---|
| 50人以上200人以下 | 1人 |
| 200人を超え500人以下 | 2人 |
| 500人を超え1,000人以下 | 3人 |
| 1,000人を超え2,000人以下 | 4人 |
| 2,000人を超え3,000人以下 | 5人 |
| 3,000人を超える場合 | 6人 |
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あわせて次のルールも定められています。
- 選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任する
- その事業場に専属の者を選任する(一定の場合を除く)
- 常時1,000人を超える事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任とする
- 常時500人を超える事業場で坑内労働などに常時30人以上を従事させる場合も、1人を専任とする
- 上記のうち特定の有害業務に常時30人以上を従事させる場合は、1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者から選任する
- 選任したときは、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告する
法律で人数まで決まっているため、企業側には「有資格者を確保しておきたい」という継続的な需要があります。
第一種でないと選任できない業種がある

衛生管理者の免許には第一種と第二種がありますが、業種によっては第二種では選任できません。
| 業種 | 選任できる免許 |
|---|---|
| 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業 | 第一種衛生管理者免許または衛生工学衛生管理者免許 |
| その他の業種 | 第一種・第二種・衛生工学のいずれでも可 |
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製造業や医療業、建設業で衛生管理者として選任されるには第一種が必要です。
転職の選択肢を広げたいなら第一種を選ぶ、という判断はここから来ています。
区分ごとの試験範囲の違いは衛生管理者の難易度と合格率で比較しています。
衛生管理者の年収に公的な平均データはない
結論から言うと、「衛生管理者の平均年収」を示す公的統計はありません。
理由は明確で、衛生管理者は職業名ではなく、事業場ごとに選任される役割だからです。
実際には総務・人事の社員、製造現場の管理職、施設管理の担当者などが兼務しています。
そのため年収を左右するのは、資格そのものより「本人の職種」「勤務先の業種と規模」です。
年収の話としてより現実的なのは、次の2つです。
- 資格手当が支給されるかどうか(社内規程による)
- 選任要件を満たす人材として、社内での評価や異動・昇進に影響するかどうか
資格手当の有無や金額は会社ごとに異なるため、取得を検討する段階で社内規程を確認しておくと期待値のずれを避けられます。
手当に結びつくかは職場によりますが、選任要件を満たせる人材であることは変わりません。
取得までの費用は衛生管理者講座10選の料金で確認できます。
【独自調査】取得後の変化は「資格手当19.2%」「変化なし19.9%」で拮抗
ママキャン資格部を運営するSNSテクノロジーズ株式会社では、第一種・第二種衛生管理者の受験経験者および学習中の方146名にアンケートを実施しました(調査期間:2026年7月10日〜7月17日)。
| 取得後に実際にあった変化 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| まだ取得しておらず、学習中のため未確定 | 31人 | 21.2% |
| 特に目立った変化はない | 29人 | 19.9% |
| 資格手当がついた/昇給につながった | 28人 | 19.2% |
| 職場での評価・信頼が高まった | 27人 | 18.5% |
| 昇進・担当業務の変化につながった | 16人 | 11.0% |
| 転職・再就職に役立った | 15人 | 10.3% |
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※n=146
「資格手当がついた/昇給につながった」19.2%と「特に目立った変化はない」19.9%がほぼ同水準で並びました。
処遇に反映された人と、反映されなかった人がほぼ同数いるということです。
一方で「職場での評価・信頼が高まった」18.5%、「昇進・担当業務の変化につながった」11.0%を合わせると、金銭以外の変化を挙げた回答も一定数あります。
本調査は回答者の申告にもとづく実測値であり、取得による昇給・昇進・転職の効果を保証するものではありません。
斉藤さやかこの結果は正直に受け止めたほうがいいと思っています。「取れば手当がつく」と期待して勉強を始めると、社内に制度がなかったときにがっかりします。逆に会社から求められて取る場合は、選任される=担当業務として認められるので、評価の面で効きやすい。自分がどちらの入り方なのかを先に確認しておくのがおすすめです。
衛生管理者の求人と転職で評価される場面
衛生管理者の資格が直接求人条件になるのは、選任義務を満たす必要がある企業です。
- 従業員50人以上の事業場を持つ企業の総務・人事職
- 製造業・建設業・運送業・医療業など第一種が必要な業種の安全衛生担当
- 複数の事業場を持ち、有資格者を各拠点に置く必要がある企業
- 施設管理・ビル管理など、労働衛生の実務と親和性の高い職種
求人票では「衛生管理者資格保有者優遇」「取得支援あり」といった形で示されることが多く、資格単体で職種が生まれるタイプの資格ではありません(衛生管理者は意味ないと言われる理由も参考にしてください)。
当編集部の調査でも「転職・再就職に役立った」と回答したのは10.3%でした。
転職で効くのは、資格そのものよりも「総務・人事の実務経験+衛生管理者」「製造現場の経験+第一種」という組み合わせです。
第一種を選ぶと選任できる業種が広がる
前述のとおり、製造業や医療業などでは第二種では選任できません。
将来の転職先を絞りたくないなら、受験資格が同じである以上は第一種を選んでおくほうが選択肢は広がります。
受験資格の条件は衛生管理者の受験資格と実務経験で確認できます。
学習の進め方は衛生管理者は独学で合格できるかを参考にしてください。
衛生管理者の仕事・年収に関するよくある質問
衛生管理者の平均年収はいくらですか?
公的統計に「衛生管理者」という職種区分はなく、平均年収として公表されている公式データはありません。
衛生管理者は総務・人事や現場管理の担当者が兼務することが多いため、年収は本人の職種と勤務先の規模に左右されます。
資格手当はもらえますか?
会社の規程によります。
当編集部の調査では「資格手当がついた/昇給につながった」と回答した人は19.2%でした。
一方で「特に目立った変化はない」も19.9%あり、制度の有無は企業ごとに異なります。
衛生管理者の仕事はきついですか?
法令上の義務として、少なくとも毎週1回の職場巡視があります。
多くの場合は他の業務と兼務するため、巡視や衛生委員会の運営が通常業務に上乗せされる形になります。
ただし専門的な判断を求められる場面は限られ、定型業務の比率が高い役割です。
未経験から衛生管理者として転職できますか?
衛生管理者の受験には労働衛生の実務経験が必要なため、完全な未経験から資格を取ることはできません。
現在の職場で労働衛生に関わる業務を担当し、実務経験を積んでから受験するのが基本ルートです。
第一種と第二種のどちらを取るべきですか?
製造業・建設業・運送業・医療業などで選任されるには第一種が必要です。
受験資格の条件は同じなので、業種を限定したくない場合は第一種をおすすめします。
まとめ|衛生管理者は「役割」であって職業名ではない
- 仕事内容は労働安全衛生法第12条で定められた「衛生に係る技術的事項の管理」
- 少なくとも毎週1回の作業場巡視が義務(労働安全衛生規則第11条)
- 常時50人以上の事業場で選任義務があり、規模に応じて最大6人が必要
- 製造業・医療業など13業種では第二種では選任できず、第一種が必要
- 公的統計に衛生管理者の平均年収はなく、年収は本人の職種と勤務先で決まる
- 調査では取得後に「資格手当・昇給」19.2%、「変化なし」19.9%が拮抗した
衛生管理者は、資格を取れば年収が上がるタイプの資格ではありません。
一方で企業には法律上の選任義務があるため、社内で担当を引き受けられる人材としての価値は安定しています。
取得を決めたら、まず自社の資格手当の規程を確認し、そのうえで学習方法を選んでください。
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