電験三種の年収を調べると、記事によって金額が大きく違います。
理由ははっきりしていて、賃金統計に「電気主任技術者」という職種区分が存在しないからです。
しかも電験三種の保持者は、働く場所によって3つの別々の職種区分に振り分けられます。
発電所勤務なら「発電員,変電員」、設計や技術職なら「電気・電子・電気通信技術者」、電気工事会社なら「電気工事従事者」です。
大分類はそれぞれ生産工程従事者、専門的・技術的職業従事者、建設・採掘従事者と、まったく別の枠になります。
この記事では、何が分かっていて何が分かっていないのかを切り分けます。
編集部のアドバイス

「電験三種の平均年収は◯◯万円」という数字を見たら、まず出どころを確認してください。公的統計にこの職種の区分はないので、根拠になりうるのは求人票の集計か事業者の独自調査だけです。自分の年収を見積もるなら、平均値より「どこで働くか」を先に決めるほうが早くたどり着きます。
電験三種の年収が公的統計に出てこない理由

厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、職種ごとに賃金を集計しています。
その職種区分に「電気主任技術者」はありません。
代わりに、電験三種の保持者が入りうる区分が複数あります。
| 区分コード | 職種 | 大分類 |
|---|---|---|
| 1072 | 電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く) | 専門的・技術的職業従事者 |
| 1641 | 発電員,変電員 | 生産工程従事者 |
| 1671 | 電気工事従事者 | 建設・採掘従事者 |
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大分類が3つに分かれている点が重要です。
同じ電験三種を持っていても、発電所で運転監視をしていれば生産工程従事者、設計部門にいれば専門的・技術的職業従事者、電気工事会社なら建設・採掘従事者として集計されます。
さらにビル管理会社に勤めている場合は、これらのどれでもなく「居住施設・ビル等管理人」に入る可能性もあります。
働く場所と集計区分の対応を並べると、ばらけ方が分かります。
| 働く場所 | 入りうる職種区分 | 所属する産業 |
|---|---|---|
| 電力会社の発電所・変電所 | 発電員,変電員 | 電気・ガス・熱供給・水道業 |
| メーカーの設計・技術部門 | 電気・電子・電気通信技術者 | 製造業 |
| 電気工事会社 | 電気工事従事者 | 建設業 |
| ビル管理会社 | 居住施設・ビル等管理人 | サービス業(他に分類されないもの) |
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つまり電験三種の年収は、統計上そもそも1本の数字にまとまりません。
区分がないので集計もされず、集計されないので公的な平均年収も存在しない、という順番です。
斉藤さやか「電験三種は年収1,000万円も可能」といった記事をよく見かけますが、それは特定の働き方の話です。統計として裏が取れる話ではないので、自分に当てはまるかは別に考える必要があります。
電験三種の年収は産業別の賃金で当たりをつける

職種で測れない以上、代理指標になるのは産業別の賃金です。
電験三種が必要とされる現場は、電力会社、工場、ビル、電気保安法人などに分かれます。
| 区分 | 賃金(月額) | 産業計との差 |
|---|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 444.0千円 | +103.4千円 |
| 建設業 | 366.3千円 | +25.7千円 |
| 産業計 | 340.6千円 | ― |
| 製造業 | 330.0千円 | -10.6千円 |
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※差は当サイトで算出
いずれも一般労働者・男女計・年齢計の数字です。
電気・ガス・熱供給・水道業は444.0千円で、16産業のなかで最も高い水準です。
産業計の340.6千円を103.4千円上回ります。
一方で製造業は330.0千円で産業計を下回ります。
同じ電験三種でも、電力会社に勤めるのと工場の保安担当になるのとでは、所属する産業の水準が100千円以上違うということです。
ただしこれは産業全体の平均で、その産業の全職種が含まれています。
電験三種を持っているかどうかで分かれた数字ではありません。
電験三種が仕事で必要とされる理由は法律にある

年収の話をする前提として、なぜこの資格に需要があるのかを押さえておきます。
電気主任技術者は電気事業法で定められた国家資格です。
電気技術者試験センターは次のように説明しています。
高圧または特別高圧で受電するビル、工場などの電気設備や電気事業用の発電所、変電所、送電線などの電気工作物の設置者に対して、原則として事業場ごとに電気主任技術者を選任し、電気設備の工事、維持及び運用に関する保安の監督を行わせるように義務づけている、という内容です。
つまり設備の側に選任義務があります。
資格者を雇わなければ設備を運用できないので、需要が法律によって作られている構造です。
扱える範囲は種別で決まっています。
| 資格 | 扱える範囲 |
|---|---|
| 第一種 | すべての事業用電気工作物 |
| 第二種 | 電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物 |
| 第三種 | 電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く) |
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第三種で扱えるのは5万ボルト未満です。
出力5千キロワット以上の発電所は除かれます。
大規模な発電所や送電設備を担当したい場合は第二種以上が必要になり、そこで扱える範囲と待遇の差が生まれます。
電気技術者試験センターは電気主任技術者について「電気事業法における自主保安体制の中核を担うキーパーソン」と位置づけています。
試験の作りも種別で違います。
| 資格 | 試験の構成 | 科目別合格制 |
|---|---|---|
| 第一種 | 一次試験と二次試験 | 一次のみ(二次にはない) |
| 第二種 | 一次試験と二次試験 | 一次のみ(二次にはない) |
| 第三種 | 一次試験のみ | あり(有効期限3年間) |
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第三種は一次試験だけで完結します。
一次試験は理論・電力・機械・法規の4科目で、科目別合格制なので3年間を使って積み上げる進め方も取れます。
収入の見通しを立てる前に、資格を取るまでにかかる時間と費用を押さえておくと計算しやすくなります。
電験三種の対策講座と受講料で、料金とサポート内容を確認できます。
電験三種の年収を自分で見積もる手順
公的な平均がない以上、自分の条件で組み立てるしかありません。
材料になるのは統計ではなく、手元で確認できる情報です。
| 確認するもの | どこで分かるか |
|---|---|
| 基本給の水準 | 応募先の求人票 |
| 資格手当の有無と金額 | 求人票または就業規則 |
| 選任されるかどうか | 求人票の業務内容 |
| 宿直・夜勤の有無 | 勤務形態の記載 |
| 所属する産業 | 電力会社か、工場か、ビル管理か、保安法人か |
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いちばん効くのは選任されるかどうかです。
産業の水準も並べて見ておきます。
| 産業 | 賃金(月額) |
|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 444.0千円 |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 440.3千円 |
| 金融業,保険業 | 437.0千円 |
| 情報通信業 | 406.0千円 |
| 建設業 | 366.3千円 |
| 産業計 | 340.6千円 |
| 製造業 | 330.0千円 |
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電気・ガス・熱供給・水道業は16産業のなかで最も高い水準で、最低の宿泊業,飲食サービス業277.2千円とは166.8千円の開きがあります(当サイトで算出)。
法律上の選任義務を満たす人として登録されるのか、その補助に入るのかで、役割の重さが変わります。
産業別の賃金で言えば、電力会社なら電気・ガス・熱供給・水道業の444.0千円、工場の保安担当なら製造業の330.0千円が水準の目安の位置になります。
その差は114.0千円です(当サイトで算出)。
ただし繰り返しになりますが、これは産業全体の平均で電験三種の効果ではありません。
斉藤さやか年収を上げたいなら、資格を取ったあとに「どの産業に行くか」を決めるほうが影響が大きいと思います。電気・ガス・熱供給・水道業と製造業では、産業の平均賃金だけで月11万円以上違います。
電験三種は受験のコストが低い資格
投じる側も確認しておきます。
| 費目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 受験手数料(インターネット申込) | 7,700円(非課税) | 原則こちら |
| 受験手数料(郵送での書面申込) | 8,100円(非課税) | 400円高い |
| 更新料 | なし | 更新制度そのものがない |
| 受験資格の要件 | なし | 年齢・学歴・実務経験を問わない |
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原則インターネット申込みです。
受験資格に制限はなく、年齢・学歴・実務経験を問いません。
更新制度もないため、維持費がかかりません。
国家資格としては入口のコストが低いほうです。
そのぶん合格率は低く、令和4年度から令和7年度までの合計で14.8%です。
※合格率は当サイトで算出
費用ではなく時間を投じる資格だと考えたほうが実態に近くなります。
そのぶん、落ちても失うのは受験手数料だけです。
科目別合格制があるので、1科目でも通れば3年間は持ち越せます。
年2回実施なので、3年間で6回受けられる計算になります(当サイトで算出)。
電験三種の年収に関するよくある質問
電験三種の平均年収はいくらですか
公的な平均年収は存在しません。
賃金構造基本統計調査の職種区分に「電気主任技術者」がないためです。
検索で出てくる金額は求人サイトの集計や事業者の独自調査で、母集団の取り方によって結果が変わります。
なぜ電験三種の年収データがないのですか
職種区分がないうえ、保持者が働く場所によって3つの別々の区分に分散するからです。
発電所勤務なら「発電員,変電員」(生産工程従事者)、技術職なら「電気・電子・電気通信技術者」(専門的・技術的職業従事者)、工事会社なら「電気工事従事者」(建設・採掘従事者)に入ります。
代わりに使える公的な数字はありますか
産業別の賃金が代理指標になります。
令和7年賃金構造基本統計調査では、電気・ガス・熱供給・水道業が444.0千円で16産業中最も高く、建設業366.3千円、製造業330.0千円、産業計340.6千円です。
ただし産業全体の平均で、資格の有無とは無関係です。
電験三種を取ると資格手当はつきますか
勤め先の就業規則によります。
公的に確認できるデータはありません。
ただし電気事業法により、高圧・特別高圧で受電する設備の設置者には事業場ごとの選任義務があるため、資格者の需要そのものは法律で作られています。
電験三種の維持に費用はかかりますか
更新制度がないため維持費はかかりません。
受験手数料はインターネット申込で7,700円(非課税)、郵送での書面申込で8,100円(非課税)です。
受験資格の制限もありません。
まとめ|電験三種の年収は働く場所で統計の枠ごと変わる
- 賃金構造基本統計調査に「電気主任技術者」という職種区分はない
- 保持者は働く場所によって3つの別々の区分に分散する
- 1072「電気・電子・電気通信技術者」は専門的・技術的職業従事者
- 1641「発電員,変電員」は生産工程従事者
- 1671「電気工事従事者」は建設・採掘従事者
- 大分類が3つに割れるため、統計上そもそも1本の数字にまとまらない
- 代理指標の電気・ガス・熱供給・水道業は444.0千円で16産業中最高
- 産業計340.6千円を103.4千円上回る
- 製造業は330.0千円で産業計を下回り、電気・ガス業との差は114.0千円
- ただしどれも産業全体の平均で、資格の有無とは無関係
- 電気主任技術者は電気事業法で定められた国家資格
- 高圧・特別高圧で受電する設備の設置者に事業場ごとの選任義務がある
- 第三種が扱えるのは電圧5万ボルト未満(出力5千キロワット以上の発電所を除く)
- 受験手数料はインターネット申込7,700円で、更新制度がなく維持費はかからない
- 令和4〜7年度の合格率は14.8%で、費用より時間を投じる資格
難易度と合格率の実データは電験三種の難易度で整理しています。
試験日と申し込みの手順は電験三種の試験日でまとめました。
講座で対策する場合は電験三種の通信講座おすすめ比較を参考にしてください。


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