行政書士の仕事内容は、本人が自由に決められるものではありません。
行政書士法という法律が、何を業務にできるかを条文で定めています。
しかも「他の法律で制限されているものは扱えない」という制限まで書かれています。
この記事では、行政書士法の条文と日本行政書士会連合会の報酬額統計から、実際の仕事内容を確認します。
編集部のアドバイス

行政書士の業務は「書類を作る」ことが基本で、そこから代理と相談に広がる構造になっています。逆に言えば、法律で他の士業に割り当てられている仕事は扱えません。資格を取ったあとに何ができるのかを知りたい場合は、条文の並びを押さえるのがいちばん早い方法です。
行政書士の仕事内容は行政書士法が4つに分けて定めている

基本になるのが第1条の3と第1条の4です。
| 条文 | 業務 |
|---|---|
| 第1条の3 | 官公署に提出する書類、その他権利義務または事実証明に関する書類を作成すること |
| 第1条の4 第1号 | 官公署に提出する手続の代理、および聴聞・弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続における代理 |
| 第1条の4 第2号 | 許認可等に関する審査請求・再調査の請求・再審査請求等、不服申立ての手続の代理と書類作成 |
| 第1条の4 第3号 | 契約その他に関する書類を代理人として作成すること |
| 第1条の4 第4号 | 書類の作成について相談に応ずること |
← 横にスクロールできます →
いずれも「他人の依頼を受け報酬を得て」行うことが前提です。
第1条の3が土台で、第1条の4はそこに代理と相談を加えた構造になっています。
なお第1条の3の書類には、電磁的記録も含まれると明記されています。
権利義務または事実証明に関する書類には、実地調査に基づく図面類も含まれます。
斉藤さやか「書類作成」と書くと地味に見えますが、許認可申請の書類は要件を満たすように組み立てる仕事です。作る前に制度を読み解く工程があるので、実態としては調査と設計に近い部分があります。
不服申立ての代理は特定行政書士に限られる
第1条の4のうち第2号だけは、すべての行政書士が行えるわけではありません。
| 区分 | 第2号(不服申立ての代理)を行えるか |
|---|---|
| 行政書士 | 行えない |
| 特定行政書士 | 行える |
← 横にスクロールできます →
条文は「前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる」と定めています。
つまり試験に合格して登録しただけでは第2号は扱えません。
日行連が実施する研修を修了して、登録に特定行政書士である旨の付記を受ける必要があります。
自分が出した許認可申請が不許可になったときに、その不服申立てまで一貫して代理できるかどうかが分かれる部分です。
行政書士が扱えない仕事も法律で決まっている

見落とされやすいのが制限の規定です。
第1条の3第2項は「行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない」と定めています。
第1条の4にも同じ趣旨のただし書きがあります。
| 規定 | 内容 |
|---|---|
| 第1条の3第2項 | 他の法律で制限されている書類の作成は行えない |
| 第1条の4 ただし書き | 他の法律で制限されている事項については代理・相談も行えない |
| 第1条の4第1号 かっこ書き | 弁護士法第72条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く |
← 横にスクロールできます →
登記は司法書士、税務申告は税理士、労働社会保険の手続は社会保険労務士といったように、他の士業法が扱いを定めている領域には入れません。
行政書士の業務範囲は、他の士業法が取っていない部分として画定されているということです。
この構造があるため、隣接する資格との違いを理解しておくと業務の輪郭がつかみやすくなります。
司法書士との切り分けは司法書士と行政書士の違いで条文ごとに比較しています。
無資格で業務を行うと罰則がある
裏返すと、行政書士の業務は資格者に独占されています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第19条第1項 | 行政書士または行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3の業務を行うことができない |
| 第19条の2 | 行政書士でない者は、行政書士またはこれと紛らわしい名称を用いてはならない |
| 第21条の2 | 第19条第1項に違反した者は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処する |
← 横にスクロールできます →
報酬を得て業として行う場合が対象です。
名称の使用も制限されており、資格がないのに行政書士と名乗ることはできません。
資格手当や独占業務という言い方の根拠は、この第19条にあります。
多くの人にとっては試験に合格するルートが現実的です。
対策の手段は行政書士試験の対策講座から選べます。
行政書士になれるのは試験合格者だけではない
仕事内容とあわせて押さえておきたいのが、資格を得るルートです。
行政書士法第2条は次のように定めています。
| 号 | 資格を有する者 |
|---|---|
| 一 | 行政書士試験に合格した者 |
| 二 | 弁護士となる資格を有する者 |
| 三 | 弁理士となる資格を有する者 |
| 四 | 公認会計士となる資格を有する者 |
| 五 | 税理士となる資格を有する者 |
| 六 | 国または地方公共団体の公務員等として行政事務を担当した期間が通算20年以上(高等学校卒業者等は17年以上)になる者 |
← 横にスクロールできます →
弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の有資格者は、試験を受けずに行政書士となる資格を持ちます。
六号は公務員として20年(高卒等は17年)の行政事務経験があれば資格が与えられるという規定です。
行政手続の実務経験が資格に相当するとみなされている、という設計が読み取れます。
なお第2条の2には欠格事由が定められており、未成年者などはこれらに該当しても資格を有しません。
報酬額統計が示す実際に多い仕事内容

条文だけでは、どの業務が実務で多いのかは分かりません。
日本行政書士会連合会が公表している報酬額統計調査には、業務ごとの回答者数が載っています。
回答者が多い業務は、それだけ実際に扱っている行政書士が多いと読めます。
| 業務 | 回答者数 | 平均報酬額 | 最頻値 |
|---|---|---|---|
| 建設業変更届出(事業年度終了) | 1,029人 | 42,997円 | 33,000円 |
| 建設業許可申請(法人・更新)知事 | 767人 | 82,408円 | 55,000円 |
| 遺産分割協議書の作成 | 705人 | 69,752円 | 55,000円 |
| 経営状況分析申請 | 577人 | 36,623円 | 33,000円 |
| 経営規模等評価申請及び総合評定値請求申請 | 575人 | 72,611円 | 55,000円 |
| 建設業許可申請(法人・新規)知事 | 512人 | 151,341円 | 165,000円 |
| 農地法第5条許可申請 | 501人 | 120,186円 | 100,000円 |
| 農地法第3条許可申請 | 493人 | 58,616円 | 50,000円 |
| 遺言書の起案及び作成指導 | 459人 | 76,855円 | 50,000円 |
| 相続人及び相続財産の調査 | 443人 | 61,722円 | 50,000円 |
← 横にスクロールできます →
上位に並ぶのは建設業関係と相続関係、それに農地関係です。
建設業の許可は5年ごとの更新と毎年の決算変更届があるため、継続的な依頼につながりやすい分野です。
相続は遺産分割協議書の作成が705人、遺言書の起案が459人と、いずれも回答者が多くなっています。
なお調査の金額には消費税が含まれ、立替金は含まれません。
専門性の高い分野は単価が上がる
回答者数は少なくても報酬額が大きい業務もあります。
| 業務 | 回答者数 | 平均報酬額 |
|---|---|---|
| 一般貨物自動車運送事業経営許可申請 | 79人 | 457,675円 |
| 在留資格認定証明書交付申請(経営・管理) | 103人 | 207,563円 |
| 風俗営業許可申請 1号 社交飲食店・料理店 | 87人 | 166,092円 |
| 開発行為許可申請(都市計画法第34条) | 52人 | 405,750円 |
← 横にスクロールできます →
運送業や入管関係、風俗営業許可などは、扱う人数は限られますが単価が高い分野です。
斉藤さやか求人票や講座の説明だけだと「行政書士=書類作成」で終わってしまいますが、この統計を見ると実務がどこに集まっているかが分かります。どの分野に進むかで日々の仕事はかなり違うものになります。
行政書士の仕事内容に関するよくある質問
行政書士は何をする人ですか?
他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類や権利義務・事実証明に関する書類を作成する専門職です。
行政書士法第1条の3に定められています。
書類を作る以外の仕事もありますか?
あります。
第1条の4で、官公署への手続の代理、契約書類の代理作成、書類作成についての相談が定められています。
特定行政書士とは何ですか?
日本行政書士会連合会の研修課程を修了した行政書士です。
不服申立ての手続の代理は特定行政書士に限って行えます。
行政書士にできない仕事はありますか?
あります。
他の法律で制限されている書類の作成や事務は扱えず、弁護士法第72条の法律事務に該当するものも除かれています。
実際に多い仕事は何ですか?
報酬額統計調査で回答者が最も多かったのは建設業変更届出(事業年度終了)の1,029人でした。
次いで建設業許可申請(法人・更新)が767人、遺産分割協議書の作成が705人です。
無資格で行政書士の仕事をするとどうなりますか?
行政書士法第19条第1項に違反し、第21条の2により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。
行政書士と名乗るだけならよいのですか?
できません。
第19条の2で、行政書士でない者が行政書士またはこれと紛らわしい名称を用いることは禁じられています。
まとめ|行政書士の仕事内容は条文で決まっている
- 基本業務は第1条の3の書類作成で、電磁的記録や図面類も含む
- 第1条の4で代理と相談が加わり、業務は4つの号に分かれる
- 不服申立ての代理(第2号)は研修を修了した特定行政書士に限られる
- 他の法律で制限されている事項は扱えず、弁護士法第72条の法律事務も除かれる
- 第19条により無資格での業務は禁じられ、違反は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
- 報酬額統計で回答者が最も多いのは建設業変更届出の1,029人
- 相続関係では遺産分割協議書705人、遺言書の起案459人
- 運送業許可や入管、風俗営業許可などは人数が少なく単価が高い
収入の決まり方は行政書士の年収で整理しています。
講座で対策する場合は行政書士の通信講座おすすめ8選で比較してください。


コメント