行政書士の年収を調べると「平均600万円」「平均400万円」と、サイトによってまったく違う数字が出てきます。
どちらにも公的な出典はありません。
国の職業分類に行政書士という区分そのものがなく、職種別の賃金が集計されていないからです。
この記事では、その事実を分類表で確認したうえで、日本行政書士会連合会が公表している報酬額の実数から収入の決まり方を整理します。
編集部のアドバイス

行政書士の収入は「単価×件数」で決まります。勤務か開業か、どの分野を扱うかで単価が10倍近く変わるため、平均値という考え方自体が実態に合いません。平均年収の数字を探すより、自分が扱う想定の業務の単価を見るほうが現実的な見積もりになります。
行政書士の年収が公的統計に出てこない理由

国が職種別の賃金を集計するときは、総務省の日本標準職業分類を使います。
法律系の職業が並ぶ中分類17「法務従事者」の内訳です。
| 小分類コード | 項目名 |
|---|---|
| 171 | 裁判官 |
| 172 | 検察官 |
| 173 | 弁護士 |
| 174 | 弁理士 |
| 175 | 司法書士 |
| 179 | その他の法務従事者 |
← 横にスクロールできます →
弁護士・弁理士・司法書士には固有の区分があります。
一方で行政書士は独立した小分類を持たず、「その他の法務従事者」に含まれます。
賃金構造基本統計調査は令和2年調査から日本標準職業分類と整合的な職種144区分で集計しているため、行政書士だけを抜き出した賃金は公表されていません。
つまり「行政書士の平均年収」という公的な数字は存在しないということです。
斉藤さやか同じ法律系でも司法書士には区分があって、行政書士にはありません。隣接資格と比べるときにこの差は意外と大きくて、司法書士側の記事でも公的な平均年収は出せませんでした。統計の作られ方から確認しておくと、どの数字を信じるかの判断がつきます。
行政書士は全国に54,186人いる

収入を考える前提として、まず母数を押さえます。
日本行政書士会連合会が公表している令和8年4月1日現在の会員数です。
| 区分 | 会員数 |
|---|---|
| 個人会員 | 54,186人 |
| 法人会員 | 1,719 |
← 横にスクロールできます →
登録しなければ行政書士として業務を行えないため、この54,186人が実際に活動しうる人数です。
令和7年度の試験合格者は7,292人でした。
合格者がそのまま全員登録するわけではありませんが、規模感としては会員数の13%前後にあたる人数が毎年新たに資格を得ている計算になります。
会員の3割は上位3都府県に集中している
都道府県別の分布です。
| 都道府県 | 個人会員数 | 全国に占める割合 |
|---|---|---|
| 東京都 | 8,573人 | 15.8% |
| 大阪府 | 4,028人 | 7.4% |
| 愛知県 | 3,447人 | 6.4% |
| 神奈川県 | 3,425人 | 6.3% |
| 埼玉県 | 2,694人 | 5.0% |
| 千葉県 | 2,389人 | 4.4% |
| 兵庫県 | 2,071人 | 3.8% |
| 北海道 | 1,966人 | 3.6% |
← 横にスクロールできます →
※割合は47会の合計から当サイトで算出
東京都だけで15.8%、上位3都府県で29.6%を占めます。
最も少ないのは鳥取県の212人で、佐賀県265人、高知県271人と続きます。
同じ資格でも、地域によって同業者の数は40倍以上の開きがあります。
行政書士の収入は1件あたりの報酬額から積み上がる

公的な平均年収がない代わりに、1件あたりいくらの仕事なのかは公表されています。
日本行政書士会連合会の報酬額統計調査です。
| 業務 | 回答者数 | 平均報酬額 | 最頻値 |
|---|---|---|---|
| 建設業変更届出(事業年度終了) | 1,029人 | 42,997円 | 33,000円 |
| 建設業許可申請(法人・更新)知事 | 767人 | 82,408円 | 55,000円 |
| 遺産分割協議書の作成 | 705人 | 69,752円 | 55,000円 |
| 建設業許可申請(法人・新規)知事 | 512人 | 151,341円 | 165,000円 |
| 農地法第5条許可申請 | 501人 | 120,186円 | 100,000円 |
| 遺言書の起案及び作成指導 | 459人 | 76,855円 | 50,000円 |
| 内容証明郵便作成 | 179人 | 26,960円 | 33,000円 |
| 在留資格認定証明書交付申請(経営・管理) | 103人 | 207,563円 | 220,000円 |
| 一般貨物自動車運送事業経営許可申請 | 79人 | 457,675円 | 330,000円 |
← 横にスクロールできます →
調査の金額には消費税が含まれ、立替金は含まれません。
内容証明郵便作成の26,960円から、運送事業の経営許可申請の457,675円まで、1件あたりの単価に17倍近い差があります。
扱う分野によって、同じ1件でも売上がまったく違うということです。
平均報酬額の分布は5万円から20万円に集中している
データのある203業務について、平均報酬額の分布を集計しました。
| 平均報酬額の帯 | 業務数 | 割合 |
|---|---|---|
| 3万円未満 | 38件 | 18.7% |
| 3万円以上5万円未満 | 29件 | 14.3% |
| 5万円以上10万円未満 | 51件 | 25.1% |
| 10万円以上20万円未満 | 51件 | 25.1% |
| 20万円以上50万円未満 | 29件 | 14.3% |
| 50万円以上 | 5件 | 2.5% |
← 横にスクロールできます →
5万円から20万円の帯に、全体の50.2%が入っています。
一方で3万円未満の業務も18.7%あり、50万円以上は2.5%にとどまります。
業務区分全体の平均報酬額の中央値は82,408円でした。
仮に1件10万円の仕事を月に5件受けたとすると、年間の売上は600万円という計算になります。
ここから事務所の経費や会費、税金が引かれた残りが手取りです。
同じ業務でも報酬額には大きな幅がある
報酬額統計には平均値だけでなく、最頻値と最大値も載っています。
同じ業務の中でどれだけ価格差があるかが分かります。
| 業務 | 回答者数 | 最頻値 | 平均 | 最大 |
|---|---|---|---|---|
| 建設業許可申請(法人・新規)知事 | 512人 | 165,000円 | 151,341円 | 365,000円 |
| 遺産分割協議書の作成 | 705人 | 55,000円 | 69,752円 | 1,000,000円 |
| 遺言書の起案及び作成指導 | 459人 | 50,000円 | 76,855円 | 304,400円 |
| 在留資格認定証明書交付申請(経営・管理) | 103人 | 220,000円 | 207,563円 | 660,000円 |
| 内容証明郵便作成 | 179人 | 33,000円 | 26,960円 | 200,000円 |
← 横にスクロールできます →
遺産分割協議書の作成を見てください。
最も多い価格帯は55,000円ですが、最大では1,000,000円という回答があります。
同じ名前の業務でも、相続人の人数や財産の内容によって手間がまったく違うためです。
行政書士の報酬には法定の基準がなく、それぞれが自分で決めています。
そのため収入を見積もるときは、平均値より最頻値を見るほうが実態に近くなります。
なお統計には極端に低い回答も含まれているため、最小値は参考になりません。
斉藤さやか報酬額が自由に決められるというのは、裏返せば自分で値決めをしなければならないということです。勤務と開業でいちばん違うのはここで、開業すると単価の設定そのものが仕事の一部になります。
報酬は業務ごとに積み上がるため、まず登録できる状態になることが前提です。
合格までの費用は行政書士講座の料金比較で確認できます。
行政書士の年収を左右する4つの要素
公的な平均値がない以上、条件から見積もるしかありません。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 働き方 | 開業して自分で受注するか、行政書士法人や企業に勤務するか |
| 扱う分野 | 内容証明2.7万円から運送業許可45.8万円まで単価が17倍違う |
| 受注件数 | 建設業のように更新と毎年の届出で継続する分野があるか |
| 地域 | 同業者数は東京8,573人から鳥取212人まで40倍の差がある |
← 横にスクロールできます →
このうち収入に最も効くのは分野と件数の組み合わせです。
単価の低い業務でも、建設業の決算変更届のように毎年必ず発生するものは件数が積み上がります。
逆に単価の高い許認可は、扱う行政書士自体が少ない代わりに案件数も限られます。
なお勤務の場合は、行政書士としての報酬ではなく給与として支払われるため、この報酬額統計は当てはまりません。
斉藤さやか「行政書士は食えない」と言われることがありますが、統計を見ると単価そのものは低くありません。問題になるのは件数のほうで、受注の導線をどう作るかが収入を決めます。資格を取った直後にいちばん差がつく部分です。
実際にどんな業務があるかは行政書士の仕事内容で条文から整理しています。
行政書士の年収に関するよくある質問
行政書士の平均年収はいくらですか?
公的な統計では特定できません。
日本標準職業分類に行政書士の小分類がなく、賃金構造基本統計調査でも行政書士だけを抜き出した集計は公表されていません。
なぜサイトによって年収の数字が違うのですか?
各サイトが独自に集めたアンケートや求人情報を集計しているためです。
母集団の取り方が違うので、数字がそろいません。
1件あたりいくらの仕事ですか?
業務によって大きく異なります。
内容証明郵便作成の平均は26,960円、一般貨物自動車運送事業経営許可申請の平均は457,675円でした。
どの分野が稼ぎやすいですか?
単価が高いのは運送業許可、開発行為許可、入管関係などです。
ただし回答者数は少なく、案件数が限られる分野でもあります。
行政書士は何人いますか?
令和8年4月1日現在で個人会員54,186人、法人会員1,719です。
勤務でも行政書士として働けますか?
働けます。
その場合は給与として支払われるため、報酬額統計の金額はそのまま当てはまりません。
地域によって差はありますか?
同業者の数には大きな差があります。
東京都の8,573人に対し、鳥取県は212人です。
まとめ|行政書士の年収は単価と件数から見積もる
- 日本標準職業分類に行政書士の小分類はなく「その他の法務従事者」に含まれる
- そのため賃金構造基本統計調査に行政書士の職種別賃金は存在しない
- 会員数は令和8年4月1日現在で個人54,186人・法人1,719
- 東京都が15.8%、上位3都府県で29.6%を占める
- 1件あたりの平均報酬額は内容証明2.7万円から運送業許可45.8万円まで17倍の差
- 平均報酬額の中央値は82,408円で、5万〜20万円の帯に50.2%が集中
- 3万円未満の業務も18.7%ある
- 収入を左右するのは働き方・分野・件数・地域の4つ
講座で対策する場合は行政書士の通信講座おすすめ8選で比較してください。


コメント