ドッグトレーナーに国家資格はありません。
ただし「資格がないから誰でもすぐ始められる」とは言えません。
犬のトレーニングを仕事として行う場合、動物愛護管理法が定める登録の対象になるからです。
しかも登録には、資格だけでも実務経験だけでも足りない要件があります。
この記事では、法律と環境省令の条文で、ドッグトレーナーになるまでに何が必要かを確認します。
編集部のアドバイス

「民間資格を取ればドッグトレーナーになれる」という説明をよく見かけますが、順序が逆です。自分で教室や出張トレーニングを始めるなら、先に都道府県知事の登録が要ります。その登録の要件を満たす材料のひとつが民間資格、という位置づけです。何を目指すかで必要なものが変わるので、先に働き方を決めてください。
ドッグトレーナーになるには資格より先に働き方を決める
まず押さえたいのは、必要な条件が働き方で変わることです。
| 働き方 | 法律上の扱い |
|---|---|
| 自分で教室・出張トレーニングを開業する | 第一種動物取扱業の登録が必要 |
| 登録済みの事業所に雇われて働く | 事業所側が登録済み。職員としての要件がかかる |
| 家族や自分の犬だけをしつける | 業として行うものではないため対象外 |
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同じ「ドッグトレーナーになる」でも、開業と就職では必要なものが違います。
国家資格がないのはどちらも共通ですが、開業側には法律の手続きが残ります。
斉藤さやか「まず資格を取ろう」と考える前に、雇われるのか自分で始めるのかを決めてください。雇われるなら要件は軽くなりますし、開業するなら資格よりも実務経験の確保が先に効いてきます。
ドッグトレーナーが開業するには第一種動物取扱業の登録が必要

動物愛護管理法第10条第1項は、動物の取扱業を営もうとする者に登録を義務づけています。
条文が挙げる種別は、販売・保管・貸出し・訓練・展示などです。
犬のトレーニングは、この「訓練」にあたります。
登録先は、事業所の所在地を管轄する都道府県知事です。
指定都市の場合はその市長になります。
登録には期限と罰則があります。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 有効期間 | 5年ごとに更新しなければ効力を失う | 法 第13条第1項 |
| 無登録営業の罰則 | 100万円以下の罰金 | 法 第46条第1号 |
| 責任者の選任 | 事業所ごとに動物取扱責任者を選任 | 法 第22条第1項 |
| 研修 | 都道府県知事が行う動物取扱責任者研修を受けさせる | 法 第22条第3項 |
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申請時に届け出る内容も条文で決まっています。
| 号 | 申請書に記載する事項 |
|---|---|
| 一 | 氏名または名称・住所(法人は代表者の氏名) |
| 二 | 事業所の名称および所在地 |
| 三 | 事業所ごとに置かれる動物取扱責任者の氏名 |
| 四 | 営もうとする第一種動物取扱業の種別と、種別に応じた業務の内容・実施の方法 |
| 五 | 主として取り扱う動物の種類および数 |
| 六 | 飼養施設を設置しているときは、その所在地・構造及び規模・管理の方法 |
| 七 | その他環境省令で定める事項 |
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種別は「訓練」を選ぶことになります。
施行規則では、飼養施設を設置する場合に平面図と付近の見取図を添えることになっており、示すべき設備まで列挙されています。
| 設備等 | 備考 |
|---|---|
| ケージ等 | 動物の飼養・保管に使うおり、かご、水槽等 |
| 照明設備 | 営業時間が日中のみ等で不要な施設は除く |
| 給水設備・排水設備 | — |
| 洗浄設備・消毒設備 | 施設・設備・動物等を洗浄/消毒するもの |
| 廃棄物の集積設備 | 汚物、残さ等 |
| 動物の死体の一時保管場所 | — |
| 餌の保管設備・清掃設備・空調設備 | 空調は屋外施設を除く |
| 遮光または風雨を遮る設備 | ケージ等がすべて屋内にある場合等は除く |
| 訓練場 | 飼養施設において訓練を行う訓練業を営もうとする者に限る |
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最後の「訓練場」は、まさにドッグトレーナーが対象になる項目です。
動物取扱責任者は実務経験と資格の両方が求められる

ここが、この職種でいちばん誤解されやすい部分です。
施行規則第9条第1項は、動物取扱責任者に選任できる人の要件を4つ挙げています。
| 号 | 要件 |
|---|---|
| イ | 獣医師法第3条の免許を取得している者 |
| ロ | 愛玩動物看護師法第3条の免許を取得している者 |
| ハ | 半年間以上の実務経験(常勤職員として在職)または同等と認められる1年間以上の飼養経験があり、かつ その種別の知識・技術を1年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること |
| ニ | 半年間以上の実務経験(常勤職員として在職)または同等と認められる1年間以上の飼養経験があり、かつ 公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって知識・技術の習得の証明を得ていること |
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注目すべきは、ハとニの「かつ」です。
獣医師か愛玩動物看護師でない限り、実務経験と、学校卒業または試験の証明の両方が要ります。
資格だけを取っても、実務経験がなければ動物取扱責任者にはなれません。
逆に、実務経験だけでも足りません。
さらに第9条第1項第2号は、他の職員に対して動物取扱責任者研修で得た知識・技術の指導を行う能力も求めています。
配置の条件も規則にあります。
事業所ごとに、1名以上の常勤の職員が、その事業所に専属の動物取扱責任者として配置されていなければなりません。
自分ひとりで開業する場合、この動物取扱責任者は自分自身になります。
つまり開業したい人ほど、先に半年以上の実務経験を積む必要があるということです。
斉藤さやか未経験からいきなり自宅教室を開こうとすると、ここで止まります。まずは登録済みの施設で常勤として半年働き、その間に試験の証明を取る。この順番なら最短で条件が揃います。
雇われて働く場合の要件は責任者より緩い

事業所の職員として働く場合は、要件が1段階軽くなります。
施行規則第3条第1項第5号は、顧客に重要事項を説明したり動物を取り扱ったりする職員について、次のいずれかに該当すればよいとしています。
| 号 | 要件 |
|---|---|
| イ | その種別に係る半年間以上の実務経験があること |
| ロ | その種別の知識・技術を1年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること |
| ハ | 公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、知識・技術を習得していることの証明を得ていること |
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動物取扱責任者が「実務経験 かつ 学校または試験」だったのに対し、職員は「いずれか1つ」です。
事業所以外の場所で顧客に説明したり動物を取り扱ったりする職員も、同じ要件が適用されます。
この差が、就職と開業のハードルの違いです。
| 立場 | 必要なもの |
|---|---|
| 職員 | 実務経験・学校卒業・試験の証明のいずれか1つ |
| 動物取扱責任者 | 実務経験に加えて、学校卒業または試験の証明 |
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未経験から入る場合、試験の証明だけでも職員として採用される道が開きます。
そこで半年の実務経験を積めば、動物取扱責任者の要件にも届きます。
民間資格は「客観的な試験」として法令上の要件に効く
ドッグトレーナーの民間資格は数多くありますが、法令上の位置づけは共通しています。
施行規則が挙げる「公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術を習得していることの証明」です。
つまり資格そのものに法的な効力があるのではなく、要件を満たす証明として使われます。
どの資格が該当するかは登録先の自治体が判断するため、開業を前提に資格を選ぶなら事前確認が要ります。
取得を考えている資格が「訓練」の種別に対応しているかも確認してください。
資格の種類と発行団体の違いは、ドッグトレーナー通信講座おすすめ比較で整理しています。
なお、収入の目安を調べる際は注意が必要です。
ドッグトレーナーは日本標準職業分類に固有の区分がなく、賃金構造基本統計調査の集計職種区分一覧表にも該当する職種がありません。
公的な平均年収が公表されていないため、求人や各社の情報を複数見て幅で捉えてください。
ドッグトレーナーになるには何から始めるか
条文から逆算すると、順序ははっきりしています。
| 順番 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 開業か就職かを決める | 必要な要件が変わる |
| 2 | 団体の試験で証明を得る | 未経験でも職員要件(ハ)を満たせる |
| 3 | 登録済み事業所で常勤として半年以上働く | 動物取扱責任者の実務経験要件を満たす |
| 4 | 第一種動物取扱業の登録を申請する | 開業する場合。種別は「訓練」 |
| 5 | 動物取扱責任者研修を受ける | 法第22条第3項の義務 |
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学校に1年以上通うルートもありますが、働きながら進めるなら試験の証明から入るほうが現実的です。
登録後も5年ごとの更新があり、更新を受けなければ効力を失います。
飼養施設を持つ場合は、衛生動物の侵入防止、清掃が容易な構造、動物の逸走を防止できる構造と強度といった基準も満たす必要があります。
ドッグトレーナーになるにはに関するよくある質問
ドッグトレーナーに国家資格はありますか
ドッグトレーナー自体の国家資格はありません。
ただし動物取扱責任者の要件には、獣医師と愛玩動物看護師という2つの国家資格が選択肢として挙げられています。
資格を取れば自宅で教室を開けますか
資格だけでは足りません。
訓練を業として行うには動物愛護管理法第10条第1項の登録が必要で、事業所ごとに動物取扱責任者を置く必要があります。
その要件は、獣医師か愛玩動物看護師でない限り、半年以上の実務経験に加えて学校卒業または試験の証明が求められます。
登録しないで始めるとどうなりますか
動物愛護管理法第46条第1号により、登録を受けないで第一種動物取扱業を営んだ者は100万円以下の罰金の対象です。
未経験からでもドッグトレーナーになれますか
職員として働く場合は、施行規則第3条第1項第5号のイからハのいずれか1つを満たせば配置されます。
団体の客観的な試験による証明であれば実務経験がなくても該当するため、未経験からの入口になります。
通信講座の資格でも要件を満たしますか
「公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって知識及び技術を習得していることの証明」に該当するかどうかが判断基準で、該当性は登録先の自治体が判断します。
開業を前提にする場合は、申請先の自治体に事前確認してください。
まとめ|ドッグトレーナーになるには開業か就職かで条件が変わる
- ドッグトレーナー自体の国家資格はない
- 犬のトレーニングを業として行うことは、動物愛護管理法第10条第1項の「訓練」にあたる
- 開業には事業所所在地を管轄する都道府県知事(指定都市は市長)の登録が必要
- 登録は5年ごとの更新制で、無登録営業は100万円以下の罰金(第13条・第46条)
- 事業所ごとに常勤・専属の動物取扱責任者を1名以上置く(施行規則第3条第1項第4号)
- 動物取扱責任者は獣医師・愛玩動物看護師でない限り、実務経験に加えて学校卒業か試験の証明が必要(施行規則第9条)
- 実務経験は常勤で半年以上、または同等と認められる1年以上の飼養経験
- 職員としての要件は実務経験・学校卒業・試験の証明のいずれか1つで足りる
- 民間資格は「団体が行う客観的な試験による証明」として要件に効く
- ドッグトレーナーは職業分類にも賃金統計にも固有の区分がなく、公的な平均年収は公表されていない
資格の種類と講座ごとの違いはドッグトレーナー通信講座おすすめ比較で確認してください。


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