通関士試験に受験資格はありません。
学歴・年齢・経歴・国籍による制限が一切なく、誰でも受験できます。
実務経験が関わるのは受験の条件ではなく、科目免除の条件としてだけです。
一方で「通関士として働く」には合格のあとに財務大臣の確認という手続があります。
この記事では受験の条件と、その先にある条件を通関業法と受験案内で確認します。
編集部のアドバイス

「受験資格なし」と「通関士になれる」は別の話です。試験は誰でも受けられますが、通関士という名称を使って働くには通関業者に就く必要があります。資格を取ってから就職先を探すのか、就職してから取るのかで進め方が変わります。ここは早めに決めておくと迷いません。
通関士試験の受験資格に制限はない

財務省は受験案内の冒頭でこう書いています。
「学歴、年齢、経歴、国籍等についての制限はありませんので、どなたでもこの試験を受けることができます」
条文にも受験の要件は置かれていません。
通関業法第23条は「通関士になろうとする者は、通関士試験に合格しなければならない」とだけ定めています。
貿易実務の経験も、関連する学部の卒業も要りません。
外国籍の方も受験できます。
受験案内には「外国籍の方は、パスポートに記載されているアルファベットで氏名を記載してください」という記載があり、受験を前提にした運用になっています。
必要なのは願書の提出と受験手数料の納付だけです。
| 必要書類 | 内容 |
|---|---|
| 受験願書 | 受験手数料として3,000円分の収入印紙を貼付(NACCS提出の場合は2,900円を電子納付) |
| 受験票 | 写真を貼付。特定記録295円分の切手を貼付 |
| 通関士試験科目の一部免除通知書の写し | すでに交付を受けている人のみ |
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3点目は免除を受ける人だけです。
初めて受ける人は受験願書と受験票の2点で足ります。
斉藤さやか受験資格がないのは、この資格を検討するときの大きな利点です。士業の中には指定科目の履修や実務経験が受験の前提になるものがありますが、通関士にはそれがありません。思い立った年に受けられます。
通関士の実務経験は科目免除の条件として使う

実務経験が意味を持つのは免除の場面です。
通関業法第24条の条件です。
| 経験 | 免除される科目 | 残る科目 |
|---|---|---|
| 通関業者の通関業務または官庁における関税その他通関に関する事務に通算15年以上 | 関税法等 と 通関実務 | 通関業法のみ |
| 通関業者の通関業務または官庁における通関事務に通算5年以上 | 通関実務 | 通関業法 と 関税法等 |
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15年以上で2科目、5年以上で1科目が免除されます。
15年のほうは「関税その他通関に関する事務」、5年のほうは「通関事務」で、対象となる業務の範囲が違います。
受験案内は5年のほうの「通関事務」を「税関における貨物の通関事務(その監督に係る事務を含む)」と定義しています。
機械的な事務は経験に数えない
ここが免除申請でつまずきやすい部分です。
受験案内にこう書かれています。
「通関業者の通関業務及び官庁の関税に関する事務等の中には、特別の判断を必要としない機械的事務(例えば、自己の判断を要しない単なるパソコン等への入力事務及びタイプ事務、使送事務、貨物の内容点検業務等)は含まれないことになっています」
数えない業務を整理します。
| 経験に数えない業務の例 |
|---|
| 自己の判断を要しない単なるパソコン等への入力事務 |
| タイプ事務 |
| 使送事務 |
| 貨物の内容点検業務 |
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在籍年数がそのまま通算期間になるわけではありません。
判断を伴う業務かどうかで切り分けられます。
期間の計算方法
期間の数え方にも決まりがあります。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 始期 | 通関業務または官庁の事務に最初に従事することとなった日 |
| 終期 | 当該業務に従事しないこととなった日の前日、または受験願書の受付締切日 |
| 月の扱い | 始期となる日・終期となる日が属する月はそれぞれ1月として計算 |
| 中断があった場合 | それぞれの従事期間を同様の方法で計算したうえで合算 |
| 同一月内に再従事した場合 | その月は引き続き従事したものとして計算 |
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終期を「受験願書の受付締切日」に置けます。
つまり申込時点で期間が足りていれば申請できます。
転職などで中断があっても、それぞれの期間を合算できます。
通関士の科目免除の申請手続
免除は自動で適用されません。
申請が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請書 | 通関士試験科目の一部免除申請書(税関様式B第1210号)1通 |
| 添付書類 | 証明書(税関様式B第1215号) |
| 提出先 | 受験願書と一括して、試験実施地を管轄する税関 |
| 提出期間 | 受験願書の受付期間と同一 |
| 返信用封筒 | 書留660円分/簡易書留530円分/特定記録390円分のいずれかの切手を貼付(角形2号・A4サイズが入るもの) |
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受験願書と一括して出します。
別便では受け付けられません。
受験案内は「免除の決定のため審査を要しますので、できる限り早めに提出してください」と付記しています。
証明書を書く人は立場で決まる
証明書の証明者は自分では選べません。
| 自分の状況 | 証明する人 |
|---|---|
| 通関業者の通関業務に従事していた/している | 当該通関業者(複数ならそれぞれ)または通関業者であった者 |
| 通関業者が死亡・解散等で証明を得られない | その通関業者が所属していた組織団体 |
| 官庁の事務に従事していて退職済み | 当該事務に係る最終所属官庁 |
| 通関業者の期間と官庁の期間を通算する | 上記の両方 |
| 現に官庁に勤務している | 当該官庁 |
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前の勤務先に証明を依頼する必要があります。
会社が解散していた場合は、所属していた組織団体が証明できる仕組みが用意されています。
免除通知書に有効期限はない
審査を通ると通知書が交付されます。
| 結果 | 交付される書類 |
|---|---|
| 免除する決定 | 通関士試験科目の一部免除通知書(受験票とともに交付) |
| 免除しない決定 | 通関士試験科目の一部免除申請却下通知書 |
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受験案内は「当該免除通知書に有効期限はありません」と明記しています。
一度交付されれば、次回以降は通知書の写しを添えるだけで足ります。
ただし虚偽の証明には重い扱いが定められています。
「虚偽の証明に基づく申請であることが明らかとなった場合には、受験禁止又は合格決定の取消しの処分がされるほか、以後2年以内の期間を定めて受験を禁止することがあります」
合格が取り消されるうえ、2年間受験できなくなることがあります。
斉藤さやか免除の申請は「期間が足りているか」を自分で判断せず、勤務先に確認してから進めるのが安全です。機械的事務を含めて年数を数えてしまうと、却下されるだけでなく申請の手間がまるごと無駄になります。
科目免除を受けた人の合格率は区分で大きく違う

免除の有無で結果がどう変わるかは、税関が公表しています。
令和7年(第59回)の受験区分別の結果です。
| 区分 | 受験科目 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 全科目受験者 | 3科目 | 5,584人 | 777人 | 13.9% |
| 2科目受験者 | 2科目(通関実務が免除) | 561人 | 58人 | 10.3% |
| 1科目受験者 | 1科目(通関業法のみ) | 177人 | 119人 | 67.2% |
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1科目受験者は67.2%が合格しています。
15年以上の経験があって残る科目が通関業法だけなので、突破率が高くなります。
注目したいのは2科目受験者の10.3%です。
全科目受験者の13.9%より低くなっています。
第58回でも同じ傾向でした。
| 年 | 全科目受験者 | 2科目受験者 | 1科目受験者 |
|---|---|---|---|
| 令和6年(第58回) | 11.2% | 10.4% | 61.3% |
| 令和7年(第59回) | 13.9% | 10.3% | 67.2% |
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2科目免除は通関実務が抜けます。
残るのは通関業法と関税法等で、どちらも法令の暗記が中心です。
実務経験が5年あっても、この2科目に直接効くとは限らないという結果になっています。
「免除があるから楽」とは言い切れない数字です。
免除が使えない場合は3科目すべてを受けることになります。
3科目を通して学べる講座は通関士講座のカリキュラムにあります。
通関士として働くには財務大臣の確認が必要
受験資格とは別に、働くための条件があります。
通関業法第31条です。
「通関業者は、通関士試験に合格した者を通関士という名称を用いてその通関業務に従事させようとするときは、その者の氏名、通関業務に従事させようとする営業所の名称その他政令で定める事項を財務大臣に届け出て、その者が次項の規定に該当しないことの確認を受けなければならない」
届け出るのは合格者本人ではなく通関業者です。
確認の相手は財務大臣です。
届け出る内容は施行令で定められています。
| 届出事項 |
|---|
| 通関士として通関業務に従事させようとする者の氏名 |
| 通関業務に従事させようとする営業所の名称 |
| 通関士試験合格の年度およびその合格証書の番号その他参考となるべき事項 |
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合格証書の番号が必要になります。
合格証書は合格発表後に郵送されるので、大切に保管しておく必要があります。
通関士になれない人の条件
確認では欠格事由に該当しないかが見られます。
| 通関士となることができない者 |
|---|
| 通関業法第6条第1号から第9号までのいずれかに該当する者 |
| 第6条第4号イの法律に該当する違反行為をした者で、その日から2年を経過しないもの |
| 通関業務の停止処分を受けた者で、停止の期間が経過しないもの |
| 通関業務に従事することを停止された者で、停止の期間が経過しないもの |
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第6条の欠格事由には次のようなものが含まれます。
| 第6条の欠格事由(抜粋) |
|---|
| 心身の故障により通関業務を適正に行うことができない者として財務省令で定めるもの |
| 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 |
| 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行を終わり等から3年を経過しないもの |
| 関税法等の規定に該当する違反行為で罰金の刑に処せられ等、3年を経過しないもの |
| 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に関するもの |
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なお受験の段階でこれらは問われません。
確認の段階で見られる条件です。
合格の効果は全国で通用する
確認は勤務先ごとの手続ですが、合格そのものの効果に地域の制限はありません。
通関業法第25条は「通関士試験に合格した者は、どの税関の管轄区域内においても、通関士となる資格を有する」と定めています。
東京で合格して大阪で働くことも、その逆もできます。
再受験は不要です。
一方で第32条により、確認を受けた通関業者の通関業務に従事しないこととなったときは通関士でなくなります。
ただし第25条の資格は残るので、別の通関業者で改めて確認を受ければ従事できます。
通関士の受験資格に関するよくある質問
通関士試験に受験資格はありますか?
ありません。
学歴・年齢・経歴・国籍等による制限は一切ないと受験案内に明記されています。
実務経験がないと受験できませんか?
受験できます。
実務経験は受験の条件ではなく、科目免除の条件です。
高卒でも受験できますか?
できます。
学歴による制限はありません。
外国籍でも受験できますか?
できます。
受験案内には外国籍の方の氏名記載方法が示されています。
科目免除はどうすれば受けられますか?
通関士試験科目の一部免除申請書(税関様式B第1210号)と証明書(税関様式B第1215号)を、受験願書と一括して提出します。
通算15年以上で2科目、通算5年以上で1科目が免除されます。
パソコン入力の仕事も経験に数えられますか?
数えられません。
自己の判断を要しない単なる入力事務やタイプ事務、使送事務、貨物の内容点検業務は含まれないと明記されています。
免除の通知書は次回も使えますか?
使えます。
免除通知書に有効期限はなく、次回以降は写しを添えて提出できます。
合格すれば通関士になれますか?
合格だけでは名乗れません。
通関業者に就き、その業者が財務大臣に届け出て確認を受ける必要があります(通関業法第31条)。
まとめ|通関士の受験資格は制限なし、条件は合格後にある
- 受験資格に学歴・年齢・経歴・国籍の制限は一切ない
- 初めて受ける人が出すのは受験願書と受験票の2点
- 実務経験は受験の条件ではなく科目免除の条件
- 通算15年以上で2科目、通算5年以上で1科目が免除される
- 機械的事務(単なる入力・タイプ・使送・貨物の内容点検)は期間に数えない
- 期間の終期は受験願書の受付締切日に置ける
- 免除は申請制で、受験願書と一括提出。通知書に有効期限はない
- 虚偽の証明は合格取消しと2年以内の受験禁止の対象になる
- 2科目受験者の合格率10.3%は全科目受験者13.9%より低い
- 通関士として働くには通関業者が財務大臣に届け出て確認を受ける必要がある
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