一級建築士の年収を調べると、600万円台から700万円台の数字がよく出てきます。
ただし国の統計に「一級建築士」という職種区分はありません。
あるのは「建築技術者」という区分で、ここには資格を持たない人も二級建築士も含まれます。
この記事では、統計で何が分かって何が分からないのかを整理したうえで、合格者がどこで働いているかを公式データで確認します。
編集部のアドバイス

資格の有無で分けた賃金データは公表されていません。そのため「一級建築士だからいくら」という平均値は作れません。代わりに公表されているのは、合格者がどの業種・どの職務に就いているかという構成比です。自分が想定する働き方に近い層がどこにいるかを見るほうが、平均年収を探すより実用的です。
職業分類に「一級建築士」という区分はない

国が職種別の賃金を集計するときは、総務省の日本標準職業分類を使います。
建築関係が含まれる中分類9の内訳です。
| 小分類コード | 項目名 |
|---|---|
| 91 | 建築技術者 |
| 92 | 土木技術者 |
| 93 | 測量技術者 |
← 横にスクロールできます →
「建築技術者」という区分は存在します。
ただしこの区分は職務の内容で分けられたもので、資格の有無では分かれていません。
つまり建築技術者には、一級建築士も二級建築士も、資格を持たずに設計や施工管理に携わる人も含まれます。
一級建築士だけを取り出した賃金は公表されていないということです。
斉藤さやか医療事務や行政書士は職業分類に区分そのものがないので平均年収が作れません。一級建築士の場合は「建築技術者」という区分はあるけれど、資格で切り分けられていない、という違いがあります。どちらにせよ「一級建築士の平均年収」は公的には出せません。
最も近い公的数字は産業「建設業」の賃金

職種で取れないので、産業で見ることになります。
令和7年賃金構造基本統計調査の結果です。
| 区分 | 所定内給与額(男女計) | 対前年増減率 |
|---|---|---|
| 産業計 | 340.6千円 | 3.1% |
| 建設業 | 366.3千円 | 3.9% |
← 横にスクロールできます →
建設業は366.3千円で、産業計の340.6千円を25.7千円上回っています。
対前年3.9%増と、産業計の3.1%増より伸び率も高い結果でした。
建設業の平均年齢は45.5歳、平均勤続年数は13.7年です。
建設業は年齢とともに賃金が伸びる
年齢階級別の所定内給与額です。
| 年齢階級 | 建設業 |
|---|---|
| 20〜24歳 | 250.5千円 |
| 25〜29歳 | 292.8千円 |
| 30〜34歳 | 330.9千円 |
| 35〜39歳 | 361.9千円 |
| 40〜44歳 | 380.5千円 |
| 45〜49歳 | 397.3千円 |
| 50〜54歳 | 429.8千円 |
| 55〜59歳 | 447.2千円 |
| 60〜64歳 | 389.5千円 |
← 横にスクロールできます →
20〜24歳の250.5千円から55〜59歳の447.2千円まで、196.7千円の開きがあります。
産業「医療,福祉」が40代以降ほぼ横ばいなのと比べると、建設業は年齢とともに伸び続ける構造です。
ただしこの数字も建設業で働く全職種の平均で、一級建築士に限ったものではありません。
なお所定内給与額は6月分の支給額で、残業代と賞与は含まれません。
一級建築士の合格者は建設業と設計事務所に集中している
資格を持つ人がどこで働いているかは、合格者の属性から分かります。
令和7年の設計製図試験の合格者3,988人の職域です。
| 職域 | 構成比 |
|---|---|
| 建設業 | 34.9% |
| 建築士事務所 | 29.6% |
| 住宅メーカー | 14.3% |
| 官公庁等 | 6.3% |
| 不動産業 | 4.1% |
| その他 | 10.8% |
← 横にスクロールできます →
建設業と建築士事務所で64.5%を占めます。
住宅メーカーを加えると78.8%です。
先ほどの賃金データで建設業の数字を見たのは、合格者の3分の1がこの産業にいるためです。
職務別では建築設計が4割を占める
同じ合格者を職務で分けたものです。
| 職務 | 構成比 |
|---|---|
| 建築設計 | 40.9% |
| 施工管理・現場管理 | 18.6% |
| 構造設計 | 6.8% |
| 工事監理 | 4.8% |
| 行政 | 4.8% |
| その他 | 24.1% |
← 横にスクロールできます →
建築設計が40.9%で最多です。
次いで施工管理・現場管理が18.6%を占めます。
設計だけでなく、現場側から資格を取る人も2割近くいるということです。
同じ一級建築士でも、設計事務所で設計を担う人と、ゼネコンで施工管理を担う人では働き方も賃金体系も異なります。
一級建築士でなければ設計できない建築物が法律で決まっている

資格が収入に効く理由は、扱える建築物の範囲にあります。
建築士法第3条は、一級建築士でなければ設計または工事監理をしてはならない建築物を定めています。
| 号 | 対象となる建築物 |
|---|---|
| 一 | 学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場、百貨店の用途で、延べ面積が500平方メートルを超えるもの |
| 二 | 木造で高さが16メートルを超えるもの、または地階を除く階数が4以上のもの |
| 三 | 鉄筋コンクリート造・鉄骨造・石造・れんが造・コンクリートブロック造・無筋コンクリート造で、延べ面積300平方メートル超、高さ16メートル超、または地階を除く階数4以上のもの |
| 四 | 延べ面積が1,000平方メートルを超え、かつ階数が2以上の建築物 |
← 横にスクロールできます →
増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合も、その部分を新築するものとみなして同じ規定が適用されます。
二級建築士でも設計できる範囲は第3条の2に定められており、延べ面積100平方メートル(木造は300平方メートル)を超えるものなどが対象です。
つまり一級を持つかどうかで、関われる案件の規模そのものが変わります。
斉藤さやか大きな公共建築や大規模な鉄筋コンクリート造は一級がないと設計できません。設計事務所で担当できる仕事の幅が変わるので、収入に効くとすればこの部分です。
収入の幅は勤務先と業務範囲で決まるため、まず資格を取ることが前提になります。
取得までの費用感は一級建築士講座の受講料一覧で確認できます。
一級建築士の年収を左右する4つの要素
公的な平均値がない以上、条件から考えるしかありません。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 勤務先の業種 | 建設業34.9%・建築士事務所29.6%・住宅メーカー14.3%で構造が違う |
| 職務の内容 | 建築設計40.9%・施工管理18.6%など担当で評価軸が変わる |
| 年齢と勤続年数 | 建設業は20代前半250.5千円から50代後半447.2千円まで伸びる |
| 雇用形態 | 全産業で正社員358.8千円に対しそれ以外は241.7千円 |
← 横にスクロールできます →
このうち資格が直接効くのは、担当できる業務の範囲です。
建築士法第3条により一級建築士でなければ設計・工事監理ができない建築物があるため、扱える案件の幅が変わります。
一方で、資格を取れば自動的に賃金が上がるわけではありません。
合格者の年齢構成を見ると、令和7年の製図合格者は24〜26歳が30.3%、27〜29歳が20.8%と20代後半が中心です。
実務経験を積みながら早い段階で取得し、その後のキャリアで回収していく資格だと読めます。
一級建築士の年収に関するよくある質問
一級建築士の平均年収はいくらですか?
公的な統計では特定できません。
日本標準職業分類の「建築技術者」に資格の有無による区分がないためです。
建設業の366.3千円を目安にしてよいですか?
建設業で働く人全体の平均としては妥当ですが、一級建築士に限った数字ではありません。
資格を持たない人も含まれています。
資格を取ると年収は上がりますか?
資格と収入の関係を示した公的データはありません。
ただし建築士法第3条で一級建築士でなければ設計・工事監理ができない建築物が定められており、扱える業務の幅は変わります。
設計事務所とゼネコンではどちらが多いですか?
令和7年の製図合格者では建設業が34.9%、建築士事務所が29.6%でした。
何歳くらいで取得する人が多いですか?
令和7年の製図合格者は24〜26歳が30.3%、27〜29歳が20.8%で、20代後半が中心です。
年齢とともに収入は伸びますか?
建設業の所定内給与額は20〜24歳250.5千円から55〜59歳447.2千円まで伸びています。
ただし一級建築士に限った数字ではありません。
女性の一級建築士はどのくらいいますか?
令和7年の設計製図試験の合格者のうち32.2%が女性でした。
まとめ|一級建築士の年収は資格別の統計が存在しない
- 日本標準職業分類に「建築技術者」はあるが、資格の有無では区分されていない
- そのため一級建築士だけを取り出した賃金は公表されていない
- 最も近い公的数字は産業「建設業」の366.3千円(令和7年・対前年3.9%増)
- 建設業は産業計340.6千円を25.7千円上回る
- 建設業の賃金は20代前半250.5千円から50代後半447.2千円まで伸びる
- 合格者の職域は建設業34.9%・建築士事務所29.6%・住宅メーカー14.3%
- 職務別では建築設計40.9%、施工管理・現場管理18.6%
- 取得は20代後半が中心で、キャリアの早い段階で取る資格
受験資格は一級建築士の受験資格にまとめています。
講座で対策する場合は一級建築士の通信講座おすすめ6選で比較してください。


コメント