アンガーマネジメントは、怒らないようにするための技術ではありません。
日本アンガーマネジメント協会は「怒らないことを目指すものではない」と明記しています。
目指すのは、怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることです。
そしていま企業で広がっている背景には、法律で事業主に義務が課されたという事情があります。
この記事では、協会の定義と条文・公的統計でアンガーマネジメントの位置づけを確認します。
編集部のアドバイス

「イライラしなくなる方法」を探してたどり着いた方は、少し期待とずれるかもしれません。アンガーマネジメントは怒りをゼロにする技術ではなく、怒りで後悔しないための訓練です。ここを取り違えると「効果がない」と感じやすくなります。
アンガーマネジメントとは怒らないことを目指す技術ではない

まず協会の定義です。
日本アンガーマネジメント協会は、アンガーマネジメントを「怒りの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニング」と説明しています。
そのうえで、こう明記しています。
「怒らないことを目的とするのではなく、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目標としています」
| 誤解されやすい理解 | 協会が示す目標 |
|---|---|
| 怒らない人になる | 怒る必要のあることは上手に怒る |
| イライラを我慢する | 怒る必要のないことは怒らなくて済むようにする |
| 感情を抑え込む | 違いを受け入れ、人間関係を良くする |
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協会は別の記事で、より端的にこう書いています。
「アンガーマネジメントは、怒りで後悔しないことであり、怒らなくなるためのノウハウではありません」
斉藤さやか「怒り」そのものを悪者にしない、という点がこの手法の出発点です。理不尽なことに怒るのは自然な反応で、問題になるのは怒り方と向ける相手を間違えたときだけ、という整理になります。
アンガーマネジメントは1970年代のアメリカで生まれた
成り立ちも協会が公開しています。
アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで生まれたとされています。
注目すべきは当初の用途です。
協会は「当初は犯罪者のための矯正プログラムなどとして活用されていましたが、時代の変遷とともに一般化されていきました」と説明しています。
つまり出発点は、怒りが行動として問題を起こした人への介入でした。
そこから企業や教育機関へ広がっていったという流れです。
この経緯を知っておくと、手法の性格が掴みやすくなります。
「気持ちを穏やかにする」ためのものというより、怒りが行動に出る前に一拍置くための訓練だということです。
現在の導入目的として協会が挙げているのは、健全な職場づくり、業務パフォーマンスの向上、そしてハラスメント防止の3つです。
日本での普及状況は、協会が公開している数字で確認できます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 協会設立年 | 2011年 |
| 累計受講者数 | 196万人 |
| 累計開講数 | 71,000回 |
| 全国支部数 | 7支部 |
| 法人研修の累計導入実績 | 3,000社以上 |
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設立が2011年なので、日本で組織的に広まったのはここ十数年です。
アンガーマネジメントが職場で広がった理由は法律にある

企業研修が増えた背景には、法改正があります。
労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)の第30条の2第1項が、事業主に措置義務を課しました。
条文はこうです。
「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」
さらに第30条の3では、研修が名指しで出てきます。
| 条項 | 誰に | 内容 |
|---|---|---|
| 第30条の3第2項 | 事業主 | 労働者の関心と理解を深め、他の労働者への言動に必要な注意を払うよう、研修の実施(条文に明記)その他の必要な配慮をするよう努める |
| 第30条の3第3項 | 事業主(法人は役員) | 自らも関心と理解を深め、労働者への言動に必要な注意を払うよう努める |
| 第30条の3第4項 | 労働者 | 関心と理解を深め、他の労働者への言動に必要な注意を払い、事業主の措置に協力するよう努める |
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見落とされがちなのが第4項です。
努力義務は事業主だけでなく、働く人ひとりひとりにも課されています。
アンガーマネジメント研修が企業で広がっているのは、この条文の構造と対応しています。
なお職場におけるパワーハラスメントの定義も明確です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ① | 優越的な関係を背景とした言動であって |
| ② | 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより |
| ③ | 労働者の就業環境が害されるもの |
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3つの要素をすべて満たすものがパワーハラスメントです。
1つでも欠ければ該当しません。
職場の相談件数が示すアンガーマネジメントの需要

必要とされている度合いは、公的統計で確認できます。
厚生労働省が毎年公表している個別労働紛争解決制度の施行状況です。
| 項目 | 令和6年度 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 総合労働相談 | 120万1,881件 | 0.7%減 |
| 助言・指導の申出 | 8,865件 | 5.9%増 |
| あっせんの申請 | 3,867件 | 4.9%増 |
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※令和7年6月25日公表、令和7年10月28日一部数値修正
総合労働相談件数は5年連続で120万件を超え、高止まりしています。
内訳は3つに分かれます。
| 内訳 | 件数 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 法制度の問い合わせ | 81万4,454件 | 2.4%減 |
| 労働基準法等の違反の疑いがあるもの | 20万7,619件 | 7.6%増 |
| 民事上の個別労働関係紛争相談 | 26万7,755件 | 0.6%増 |
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そのなかで、民事上の個別労働関係紛争の相談内容を見ると順位がはっきりします。
「いじめ・嫌がらせ」が54,987件で、13年連続の最多です。
ここで重要な注意点があります。
この54,987件には、パワーハラスメントの相談が含まれていません。
令和4年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行により、同法に規定するパワーハラスメントの相談は同法に基づいて対応されるため、別に計上されているからです。
つまりパワハラを除いてなお、いじめ・嫌がらせが13年連続で最多という状況です。
紛争調整委員会によるあっせんの申請でも、上位は次のようになっています。
| 順位 | 申請の内容 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 解雇 | 792件 |
| 2 | いじめ・嫌がらせ | 716件 |
| 3 | 雇止め | 433件 |
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相談の段階だけでなく、第三者を入れて解決を図る段階でも人間関係が上位に来ています。
なお相談件数では「労働条件の引下げ」が30,833件(前年度比2.0%増)で続いています。
斉藤さやか数字を見ると、職場のトラブルの中心はいまも人間関係です。アンガーマネジメントが「感情の話」ではなく「労務の話」として研修に入っているのは、この構造があるからです。
学ぶ入口は研修だけでなく、個人で受けられる講座も用意されています。
アンガーマネジメントの資格と講座で、料金とサポート内容を確認できます。
アンガーマネジメントを学ぶ人の顔ぶれは幅広い
学ぶ層も、協会が公開しています。
協会認定のアンガーマネジメントファシリテーターの職業分布では、会社員が最も多くなっています。
社内トレーニングに取り入れたい人、キャリアアップを目指す人、副業・兼業として学ぶ人が増えているとされています。
協会が挙げているそのほかの受講者の背景は次のとおりです。
| 分野 | 具体例 |
|---|---|
| 研修・教育 | 研修講師、教師、保育士 |
| 医療・介護 | 看護師、介護士(感情労働と言われる職種)、医師 |
| 心理 | カウンセラーなど心理分野に携わる人 |
| 家庭 | 子育て中の親 |
| その他 | 経営者、個人事業主、士業、公務員、スポーツ選手、体育指導者 |
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職場向けの手法というだけでなく、家庭で使いたい人の受け皿にもなっています。
協会は「職業、性別、年齢に関係なく誰もが学べる心理トレーニング」と位置づけています。
看護師や介護士が挙がっているのは、協会が感情労働と呼ばれる職種として位置づけているためです。
実際の学び方や資格の選び方はアンガーマネジメント通信講座おすすめ比較でまとめています。
アンガーマネジメントとはに関するよくある質問
アンガーマネジメントをすると怒らなくなりますか
なりません。
日本アンガーマネジメント協会は「怒らないことを目指すものではない」と明記しており、目標は怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることだとしています。
アンガーマネジメントはいつ生まれたものですか
協会によると1970年代のアメリカで生まれたとされています。
当初は犯罪者のための矯正プログラムなどとして活用され、時代の変遷とともに一般化しました。
なぜ企業でアンガーマネジメント研修が増えているのですか
労働施策総合推進法第30条の2で事業主にパワーハラスメント防止の措置義務が課され、第30条の3第2項では研修の実施が努力義務として明記されているためです。
同条第4項では労働者本人にも努力義務があります。
職場のパワーハラスメントの定義は何ですか
①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、の3要素をすべて満たすものです。
日本ではどれくらい広まっていますか
日本アンガーマネジメント協会は2011年設立で、累計受講者数196万人、累計開講数71,000回、法人研修の導入実績3,000社以上と公表しています。
まとめ|アンガーマネジメントとは怒りで後悔しないための訓練
- 協会の定義は「怒らないことを目指すものではない」心理教育・心理トレーニング
- 目標は、怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らなくて済むようにすること
- 協会は「怒りで後悔しないことであり、怒らなくなるためのノウハウではない」とも説明している
- 1970年代のアメリカで生まれ、当初は犯罪者の矯正プログラムなどに使われていた
- 日本アンガーマネジメント協会は2011年設立、累計受講者196万人・開講71,000回・3,000社以上
- 企業で広がった背景は労働施策総合推進法第30条の2の措置義務
- 第30条の3第2項で事業主に研修の実施が努力義務、第4項で労働者本人にも努力義務がある
- パワハラは①優越的な関係を背景②業務上必要かつ相当な範囲を超える③就業環境が害される、の3要素すべてを満たすもの
- 令和6年度の総合労働相談は120万1,881件で5年連続120万件超
- 「いじめ・嫌がらせ」は54,987件で13年連続最多。しかもこの数字にパワハラの相談は含まれていない
- 学ぶ層は会社員が最多で、研修講師・看護師・介護士・カウンセラー・子育て中の親まで幅広い
具体的な進め方はアンガーマネジメントのやり方で、効果への疑問はアンガーマネジメントは意味ないのかで扱っています。
講座で体系的に学ぶ場合はアンガーマネジメント通信講座おすすめ比較を参考にしてください。


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