通関士とは、輸出入の申告書類を審査して記名する国家資格です。
貿易に関わる資格はいくつもありますが、この役割を法律で割り当てられているのは通関士だけです。
一方で「意味ない」「食えない」という検索もよくされています。
この記事では通関業法の条文と税関の公表データから、通関士とは何なのかと、そう言われる理由の中身を確認します。
編集部のアドバイス

通関士は「持っていると有利な資格」ではなく、「その営業所にいなければ業務が回らない資格」です。この違いを押さえておくと、ネットで見かける評価のばらつきの理由が見えてきます。必置資格は数が要るぶん採用の入口が広く、代わりに一人あたりの希少性は士業ほど高くありません。
通関士とは通関業者の営業所で申告書類を審査する国家資格

通関業法は通関士の役割を条文で定めています。
まず、通関業者には通関士を置く義務があります。
「通関業者は、通関業務を適正に行うため、その通関業務を行う営業所ごとに、政令で定めるところにより、通関士を置かなければならない」
営業所ごとに置く、という書き方です。
会社に1人いればよいのではなく、通関業務を行う営業所の単位で必要になります。
人数は固定ではありません。
施行令第5条は「貨物の数量及び種類並びに通関書類の数、種類及び内容に応じて必要な員数の通関士を置かなければならない」と定めています。
扱う量が増えれば必要な人数も増える設計です。
通関士が担うのは書類の審査と記名
置かれた通関士が何をするかも条文に書かれています。
「通関業者は、他人の依頼に応じて税関官署に提出する通関書類のうち政令で定めるものについては、通関士にその内容を審査させ、かつ、これに記名させなければならない」
対象書類は施行令で列挙されています。
| 通関士の審査と記名が必要な書類 |
|---|
| 輸出または輸入の申告書 |
| 保税蔵置場・保税工場・総合保税地域への搬入等の承認申請書 |
| 不服申立書 |
| 特例申告書 |
| 修正申告書および更正請求書 |
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輸出入の申告書という、貿易実務の中心にある書類です。
通関士以外の人が作ることはできますが、内容を審査して記名するのは通関士でなければなりません。
斉藤さやか「独占業務がある資格」と説明されることが多いのですが、正確には「この書類は通関士が審査して記名しないと出せない」という形です。書類づくりそのものを独占しているわけではありません。ここを正しく理解しておくと、職場での役割のイメージがつきます。
通関士とは税関職員とは立場が違う
混同されやすいのが税関職員との関係です。
通関業法第1条は法律の目的をこう書いています。
「この法律は、通関業を営む者についてその業務の規制、通関士の設置等必要な事項を定め、その業務の適正な運営を図ることにより、関税の申告納付その他貨物の通関に関する手続の適正かつ迅速な実施を確保することを目的とする」
規制される側が通関業者であり、通関士はそこに置かれる立場です。
立場の違いを整理します。
| 項目 | 通関士 | 税関職員 |
|---|---|---|
| 所属 | 通関業者(民間企業) | 税関(国の行政機関) |
| 立場 | 申告する側の代理・代行 | 申告を受けて審査・許可する側 |
| なる方法 | 通関士試験に合格し、勤務先が財務大臣の確認を受ける | 国家公務員としての採用試験 |
| 根拠 | 通関業法 | 関税法ほか |
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申告書を出す側が通関士、受け取る側が税関です。
通関業そのものも許可制で、通関業法第3条は「通関業を営もうとする者は、財務大臣の許可を受けなければならない」と定めています。
許可を受けた会社の一覧は税関が公表しており、令和8年6月1日時点で997社です。
通関士になるには合格のあとに財務大臣の確認が必要
試験に合格することと、通関士になることは別の段階です。
通関業法第23条は「通関士になろうとする者は、通関士試験に合格しなければならない」と定めています。
その先に確認の手続があります。
「通関業者は、通関士試験に合格した者を通関士という名称を用いてその通関業務に従事させようとするときは、その者の氏名、通関業務に従事させようとする営業所の名称その他政令で定める事項を財務大臣に届け出て、その者が次項の規定に該当しないことの確認を受けなければならない」
届け出るのは合格者本人ではなく、雇う側の通関業者です。
確認を受ける相手は財務大臣です。
段階を並べます。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 通関士試験に合格する | 第23条 |
| 2 | どの税関の管轄区域内でも通関士となる資格を持つ | 第25条 |
| 3 | 通関業者に就き、その業者が財務大臣に届け出て確認を受ける | 第31条 |
| 4 | 通関士の名称で通関業務に従事する | 第31条 |
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合格したあとに勤務先が決まっていなければ、4段目には進めません。
一方で2段目の効果は全国で通用します。
第25条は「通関士試験に合格した者は、どの税関の管轄区域内においても、通関士となる資格を有する」と定めています。
通関業務を離れると通関士でなくなる
第32条に資格の喪失が規定されています。
| 通関士でなくなる場合 |
|---|
| 確認を受けた通関業者の通関業務に従事しないこととなったとき |
| 欠格事由に該当するに至ったとき |
| 通関士試験の合格の決定が取り消されたとき |
| 偽りその他不正の手段により確認を受けたことが判明したとき |
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退職すれば通関士ではなくなります。
ただし試験合格の効果である第25条の「通関士となる資格」は残ります。
別の通関業者に移り、そこで改めて確認を受ければ従事できます。
通関士が「意味ない」と言われる理由は3つある

ネガティブな評価には、それぞれ根拠になっている事実があります。
公表データと条文で確認します。
理由1|勤務先が決まらないと名乗れない
上で見た第31条の構造がそのまま理由になります。
合格しても、通関業者に就かなければ「通関士」として活動できません。
行政書士や税理士のように、自分で登録して開業する道が用意されていません。
「取っただけでは使えない」という評価はこの点では正確です。
ただし必置資格なので、通関業者側には採用する理由があります。
営業所ごとに必要な員数を置かなければ、そもそも通関業務ができません。
理由2|就く場所が地域的に偏っている
働く場所は港湾と空港のある地域に集まります。
令和8年6月1日時点の通関営業所2,036か所を、当サイトで都道府県別に集計しました。
| 都道府県 | 営業所 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 大阪府 | 320か所 | 15.7% |
| 東京都 | 313か所 | 15.4% |
| 神奈川県 | 217か所 | 10.7% |
| 千葉県 | 168か所 | 8.3% |
| 福岡県 | 158か所 | 7.8% |
| 愛知県 | 156か所 | 7.7% |
| 兵庫県 | 138か所 | 6.8% |
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上位7都府県で1,470か所、全体の72.2%です。
一方で47都道府県すべてに1か所以上はあります。
| 都道府県 | 営業所 |
|---|---|
| 岐阜県 | 3か所 |
| 鳥取県 | 2か所 |
| 埼玉県 | 1か所 |
| 山梨県 | 1か所 |
| 奈良県 | 1か所 |
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内陸県にも存在はしますが、選べる数ではありません。
「住んでいる地域では活かせない」という声が出るのは、この分布が理由です。
理由3|公的な年収データが存在しない
総務省の日本標準職業分類には、通関士という区分がありません。
全416項目を検索して「通関」を含む項目は0件でした。
国の統計で「通関士の平均年収」を確かめる方法がないということです。
待遇のイメージが持ちにくいぶん、判断がネガティブに振れやすくなります。
斉藤さやか3つの理由はどれも事実に根拠があります。ただし「だから無意味」ではありません。必置資格は、資格がないと組織が業務を回せないタイプです。就職の入口として機能する場所が限られている、というのが正確な読み方だと思います。
受験資格に制限がないぶん、対策の設計が結果を分けます。
講座の選択肢は通関士の通信講座を比較するにまとめています。
通関士の合格者は59回で54,943人

資格の規模感も押さえておきます。
通関士試験は昭和42年に始まり、令和7年で第59回を数えます。
| 項目 | 第1回〜第59回 累計 |
|---|---|
| 願書提出者 | 481,314人 |
| 受験者 | 353,124人 |
| 合格者 | 54,943人 |
| 合格率 | 15.6% |
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59年で54,943人が合格しています。
年平均にすると931人です。
令和7年(第59回)の合格者は954人でした。
| 年 | 回 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和5年 | 57 | 6,332人 | 1,534人 | 24.2% |
| 令和6年 | 58 | 6,135人 | 759人 | 12.4% |
| 令和7年 | 59 | 6,322人 | 954人 | 15.1% |
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毎年1,000人前後が新たに合格し、営業所2,036か所に供給されていく規模です。
なお、現に働いている通関士の人数を示す公式統計は、今回の調査では見つかりませんでした。
通関業者一覧は営業所単位で、通関士の人数を含んでいません。
通関士の資格は全国どの税関でも通用する
地域の偏りの話と混同されやすい点なので、切り分けておきます。
働く場所は偏っていますが、資格そのものに地域の制限はありません。
第25条が「どの税関の管轄区域内においても、通関士となる資格を有する」と定めています。
試験も試験地によって問題が違うわけではありません。
第27条は「通関士試験は、毎年一回以上、財務大臣が決定する問題により、各税関長が行なう」と定めています。
問題は財務大臣が決定した同一のもので、実施だけを各税関長が行います。
どこで受けても同じ試験で、受かれば全国で通用する、という構造です。
通関士には守秘義務と懲戒処分がある
役割の重さも条文に表れています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第19条(秘密を守る義務) | 正当な理由なく通関業務に関して知り得た秘密を漏らし、または盗用してはならない。職を離れた後も同様 |
| 第33条(名義貸しの禁止) | 通関士は、その名義を他人に通関業務のため使用させてはならない |
| 第35条(通関士に対する懲戒処分) | 財務大臣は、戒告し、1年以内の期間を定めて通関業務に従事することを停止し、または2年間従事を禁止することができる |
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守秘義務は退職後も続きます。
名義貸しは明文で禁止されています。
懲戒処分の最も重いものは、2年間の従事禁止です。
書類に記名する立場である以上、その記名には責任が伴います。
通関士とはに関するよくある質問
通関士とはどんな資格ですか?
通関業者の営業所に置かれ、税関官署へ提出する輸出入の申告書等を審査して記名する国家資格です。
通関業法第13条と第14条に定められています。
通関士と税関職員は違いますか?
違います。
通関士は民間の通関業者に所属して申告する側、税関職員は国の行政機関で申告を受ける側です。
通関士は独占業務のある資格ですか?
輸出入申告書等の審査と記名は通関士でなければできません。
ただし書類の作成そのものを独占しているわけではありません。
合格すればすぐに通関士ですか?
違います。
通関業者に就き、その業者が財務大臣に届け出て確認を受ける必要があります(通関業法第31条)。
退職すると資格はなくなりますか?
通関士ではなくなりますが、試験合格の効果は残ります。
別の通関業者で改めて確認を受ければ従事できます。
通関士は意味がないと言われるのはなぜですか?
勤務先が決まらないと名乗れないこと、営業所が上位7都府県に72.2%集中していること、公的な年収統計がないことが理由として挙げられます。
いずれも事実に根拠はありますが、必置資格である点は変わりません。
通関士の合格者は何人いますか?
第1回から第59回までの累計で54,943人です。
令和7年(第59回)は954人が合格しました。
まとめ|通関士とは営業所に必ず置かれる必置の国家資格
- 通関業者は通関業務を行う営業所ごとに通関士を置かなければならない(通関業法第13条)
- 通関士は税関へ提出する輸出入申告書等を審査し記名する(第14条)
- 対象書類は施行令第6条で列挙され、申告書・不服申立書・特例申告書・修正申告書等
- 通関士は申告する側、税関職員は受け取る側で立場が異なる
- 合格後に通関業者が財務大臣へ届け出て確認を受けて初めて名乗れる(第31条)
- 通関業務を離れると通関士でなくなるが、合格の効果は残る(第32条・第25条)
- 「意味ない」の理由は勤務先前提・地域の偏り・公的年収データの不在の3点
- 第1回から第59回までの累計合格者は54,943人、累計合格率15.6%
- 通関営業所は全国2,036か所で、上位7都府県に72.2%が集中
難易度の数字は通関士の難易度で確認できます。
年収の調べ方は通関士の年収にまとめています。
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